― 594 ―新の成果を披露する場となった点で、極めて貴重な機会であった。講演後も、西洋美術における署名の問題などに関し熱心な質疑応答が繰り広げられ、学生から幅広い専門分野の研究者に至るまで、多大な刺激を与えたことが窺えた。また、終了後には宮下教授及び在阪神の若手美術史研究者をも交えて懇親会が開催され、多彩な話題にさらに熱心な議論が交わされ有意義な機会となったことを付け加える。以上2回の講演のほか、ストーン教授からはグエルチーノ展および国立西洋美術館の所蔵作品についての感想も得た。グエルチーノ展については、油彩作品が一堂に集められた会場は見応えがあり、カタログも良く出来ているが、素描が展示されていないことは非常に残念だとのコメントであった。所蔵作品については、近年購入したティツィアーノと工房による《洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ》がハイライトのひとつとなっており、良い購入だったのではないかという話であった。この作品はかつてニューヨーク・サザビーズのオークションに出品されたことがあるのだが、ストーン教授はしばしばサザビーズの鑑定を依頼されているため、このティツィアーノ作品もニューヨークで目にしており、その時から注目していたらしい。また、寄託作品のフェルメールに帰属《聖プラクセディス》に関するアメリカの研究者たちの意見についてもいくつか伝えていただいたことは、収穫であった。② 「ベラスケスの肖像画と神話画」期 間:2015年4月20日~4月29日(10日間)招致研究者:スペイン、国立プラド美術館 スペイン絵画(1700年以前)担当学芸部長ハビエル・ポルトゥース・ペレス(Javier Portus Perez)報 告 者:長崎県立美術館 学芸員 豊 田 唯はじめに本招致では、スペイン黄金世紀美術の世界的な研究者であるハビエル・ポルトゥース・ペレス氏(国立プラド美術館 スペイン絵画[1700年以前]担当学芸部長)を招致し、「ベラスケスの肖像画と神話画」を総合テーマに長崎県美術館と上智大学で講演会を開催した。以下では、初めに本招致までの経緯を説明し、その後、両講演の概要を報告する。また、今回の来日によるポルトゥース氏と諸分野の研究者との交流についても、各講演の概要と併せて記述したい。
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