― 595 ―1.本招致までの経緯本招致のきっかけは、報告者がポルトゥース氏に「プラド美術館所蔵 スペイン黄金世紀の静物画─ボデゴンの神秘─」展(長崎県美術館、2015年4月~同年7月)の学術監修を依頼したことである。同展では、スペイン黄金世紀美術の一端である静物画にスポット・ライトをあて、その独特な世界を8点の作品によりコンパクトに提示しようとした。しかし、やはりジャンル的な偏りは否めず、鑑賞者の誤解を防ぐためにも、別途、同時代の美術の心髄をしっかりと紹介すべきであるように思われた。そこでポルトゥース氏に事情を伝え、同展の記念講演を依頼したところ、同氏は17世紀スペイン最大の画家であるディエゴ・ベラスケス(1599~1660年)についての講演を提案し、それに報告者も賛同した。一方、我が国のスペイン美術史研究への刺激としてポルトゥース氏の来日を生かすべく、松原典子氏(上智大学 准教授)に協力を仰いだところ、上智大学でも講演会を開催できる運びとなった。その朗報を受けて報告者は、ポルトゥース氏、松原氏と改めて相談し、両講演の総合テーマを「ベラスケスの肖像画と神話画」に設定した。そしてポルトゥース氏には、長崎で「肖像画家、ベラスケス」というタイトルの、東京で「ベラスケスと古典古代の神話」というタイトルの講演を授けてもらうことになった。2.講演の概要1) 「肖像画家、ベラスケス(Velázquez, pintor de retratos)」逐次通訳:貫井一美(大妻女子大学 准教授)日時:2015年4月25日(土)午後2時から4時まで場所:長崎県美術館 ホール本講演においてポルトゥース氏は、ベラスケスの肖像画を採り上げた。同氏曰く、ベラスケスにとって肖像画は「自然の模倣」という性格において静物画と相通じていた。そのため、本テーマを「スペイン黄金世紀の静物画」展の記念講演として選択したという。講演会は、「ポルトゥース氏が原稿の一段落を口述した後、通訳者である貫井一美氏が同段落を邦訳する」という手順で進められた。貫井氏はベラスケスの専門家であるのみならず、ポルトゥース氏とも個人的に親しく、ポルトゥース氏も全幅の信頼を
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