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― 599 ―迎の挨拶にはじまり、 Laurent Hablot氏(CESCM-Université de Poitiers)によるドゥヴィーズの定義と研究の現状報告、そしてMichel Pastoureau氏(EHESS) によるドゥヴィーズの生成経緯にかんする非常に示唆に富んだ講演によって3日間にわたるシンポジウムが開幕した。研究発表の対象となる時代はほぼ一貫していたとはいえ、ドゥヴィーズの多様な使用方法や諸分野からの考察方法に多くを学ぶこととなった。筆者は『マルグリット・ドルレアンの時祷書』(フランス国立図書館 ラテン語1156B番)におけるイタチの表象にドゥヴィーズの機能を指摘した上で、現在まで単なる装飾と見なされてきた人物像の同定を試み、ブルターニュ公家の繁栄にたいする写本所有主の祈念を浮き彫りにする発表をおこなった(注4)。紋章学の伝統的な考察方法とも、美術史学者による先行研究とも異なる発表内容には賞賛と同時に困惑の声が寄せられたが、ブルターニュにかんする論考を多数発表しておられるChristian de Mérindol氏(Musées nationaux, Paris) やMichel Pastoureau氏に非常に有益な指摘とあたたかい励ましのお言葉を頂き、研究者としての歩みを進めていく上での強い支えを得ることとなった。シンポジウムの発表論集は刊行予定であるため詳細は割愛するが、その運営についてはここに特記する必要があろう。ヨーロッパ諸国からバターリャ入りした参加者達には非常に豪華な宿泊施設と食事のみならず、シンポジウムの会場となった修道院や近郊の世界遺産トマール修道院の見学会が用意されていた。参加者がシンポジウム期間中に親交を深め、ドゥヴィーズ関連の研究・教育にかんする貴重な知識や情報を共有し得たのは、ポルトガルとフランスからの多くの後援・協賛者はもとより(注5)、シンポジウムの主催者であるMiguel Metelo de Seixas氏 (IEM/CHAM-Université Nova deLisbonne)とLaurent Hablot氏のお陰と確信している。ここに深甚なる謝意を表すると共に、今後日本で国際シンポジウムを開催するための良き手本としたい。2.MENESTREL研究集会・総会(於 :ポーランド国立図書館)中世関係ポータルサイト「メネストレル」(注6)の研究集会・総会は、1997年来フランス語圏の研究・教育機関で開催されてきたが、今回はメンバーの一人であるSlawomir Szyller氏のご尽力によりポーランド国立図書館で行われた(注7)。生憎エールフランスのストライキと重なり、発表を予定していたうちの5名が不参加となったもののテキストの代読等で十分に補われ、様々な国・領域における写本のデジタルデータベース化の現状や、その研究・教育における役割についての報告と活発な質疑応答が行われた。いっぽうポーランドやチェコ共和国における写本や中世ラ

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