― 601 ―背景の説明と共に辿れるようになっており、訪問者がこれを機に中世に関心を抱いたり、再訪して理解を深めようとする意欲に繫がる可能性が十分窺えた。同館ではDanièle Alexandre-Bidon氏(EHESS)の監修で西欧中世にかんするパネル展示が常時企画されているが、今期の《Lʼamour au Moyen Age》も非常に興味深いものだった。美術館に改装された12世紀の城や同時代に建造されサン・ジャン・バティスト教会が残るヌムール市でも、「文化遺産の日」に関わる特別プログラムが用意されていた。雨模様であったためか様々な歴史建造物を徒歩で周遊できるコースをめぐる人には出会わなかったものの、美術館では中世の音楽とダンスの披露や、ヨーロッパ諸国の漫画をとおして19世紀末以来、中世が如何に解釈されてきたかをパネルで解説した《Moyen Age en bandes dessinées》、さらに同館が所蔵する中世の彫像などを展示した《Le Moyen Age en héritage》が開催されており、親子連れで大変な賑わいを見せていた。美術館・博物館の教育上の役割が強く感じられるフランスと比べ、日本ではその重要性が未だ十分には認識されていないように思われる。特に高等教育・研究機関との「教育」における連携は今後一層深めてゆくべきだろう(注13)。注⑴写本彩飾の多角的な考察から中世の社会や文化のありようを学ぶことを目的とした講義「フランスの社会と文化」の成果については、以下に報告している:「「?」と「!」の果てしなき往還のなかで─「フランスの社会と文化」を担当して─」『こだはら』第37号、帝塚山学院大学、2015年3月、9-18頁;「「見えないもの」の痕跡─異文化教育としての写本彩飾─」西洋中世学会第7回大会ポスター発表、2015年6月14日(於:東洋大学)⑵http://www.empresasdevisesbadges.com/index.php⑶Laurent Hablot氏が構築中のドゥヴィーズのデータベースは、ポワチエ大学のウェブサイトで公開されている:http://base-devise.edel.univ-poitiers.fr/index.php)。⑷当該写本における子宝祈願の表象については次の拙稿を参照されたい:「時祷書の語り―マルグリット・ドルレアンの子宝祈願をめぐって―」、『ステラ』第32号、九州大学フランス語フランス文学研究会、2013年12月、137-152頁。⑸Mosteiro de Batalha / Direcção Geral de Património Cultural, Instituto de Estudos Medievais et Centro deHistória de Além-Mar / Faculdade de Ciências Sociais e Humanas / Universidade Nova de Lisboa,Instituto Português de Heráldica, Centro de Património da Estremadura, Centre dʼétudes supérieures decivilisation médiévale (CESCM), Lʼuniversité de Poitiers, La fédération Moyen Age et Renaissance /université de Tours, université de Poitiers (FESMAR).⑹MENESTREL(http://www.menestrel.fr/)の活動内容については、「西洋中世関係ポータルサイト「メネストレル」」、『西洋中世研究』第7号、知泉書館(2015年12月刊行予定)を参照されたい。⑺http://www.menestrel.fr/IMG/pdf/Programme_Varsovie.pdf
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