― 604 ―展開しており、1867年には、写真と版画の中間的印刷技法であるフォトグリプティー(注2)のフランスにおける独占使用権を獲得したことによってその隆盛を迎えたとの知見を得ていた。しかし、1880年代には同技法を用いた複製写真が見られなくなっている。その後は、20世紀初頭まで実用的な印刷技法として世界中で一般的に用いられたコロタイプ印刷に移行していったとも考えられるが、1884年にグーピル商会の創業者一家が事業から手を引いてブッソ=ヴァラドン商会へと改組され、その直後の1887年に同社が株式競売にかけられて実質的に消滅した時期とも重なることから、同社の複製写真の流通事業も終焉を迎えたのではないかと考えられる。本派遣調査によって浮かび上がってきた複製写真の流通とグーピル商会改組の関連性については、今後の研究課題としたい。また、グーピル商会の複製写真に関する事業において注目したいのは、同社と写真家の関係である。同社が製作・販売した複製写真の中には、撮影を担当した写真家の名前が付されているものが散見される。おそらく、記名があるものに関しては、グーピル商会が写真家に使用料を支払って製作したものであると推察される。特に多く名前が見られる写真家としては、シャルル・ミシュレとイギリスからの移民であったロベール・ビンガムが挙げられる。報告者は、日本大学芸術学部所蔵の『フランス19世紀同時代人ギャラリー(Galerie contemporaine)』のデジタル・アーカイブ化に携わった際の調査から、シャルル・ミシュレや、ロベール・ビンガムといった1850~60年代を中心に絵画複製を専門としていた写真家がフランス写真協会の会員であったという知見を得ていた。そこで、報告者が本調査の中でグーピル美術館と並んで調査を希望していたのが、図1 グーピル紹介が製作・販売を行っていた名刺判サイズの絵画複製写真の一例。右は裏面(部分)。通し番号が振られているのがわかる。
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