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― 606 ―上がってくる。こうした状況は、日本国内においても大きく変わるものではない。国内における近年の注目すべき先行研究としては、三浦篤氏が2011年度に行った「東京美術学校に招来された西洋美術写真調査」が、報告者の研究目的にも大きく関連している。三浦氏の報告によれば、これらの複製写真はフェノロサ、岡倉覚三らが明治20年頃、欧米視察中に購入したもので、その総数は3000枚以上に及ぶという。同報告の中で三浦氏はデジタル・アーカイブ化の必要性とともに、複製写真が画家たちの様式や個別作品へ与えた影響を詳らかにすることが今後の課題であると述べている。このような我が国での西洋美術の複製写真招来の事例も踏まえつつ行った今回の助成調査によって、報告者は絵画複製写真の生産量の多さと流通の国際性を改めて認識するに至った。今後、複製写真を研究対象とするには、デジタル・アーカイブ化は各国、各機関での重要な課題となってくるであろう。さらに、三浦氏の指摘にもあるように、そうした絵画複製写真がとりわけ、我が国の美術表現や美術教育にどのような影響を与えていったのかを明らかにしていくことが、美術史における複製写真の史的価値を明確にすることに繋がるのではないだろうか。他方で写真史研究の側面からいえば、それがただの複写・複製という、職工的・営利的な行為にとどまらず、表現としての意味を担っていたのかどうかを史的に検証することが、本助成の研究成果としての責務であると感じている。注⑴ 1987年にヴァンサン・アンベルティの遺族より寄贈された写真ネガ等のコレクションを母体とし、1998年にアキテーヌ博物館内に併設された。現在では写真約7点、版画約4万6千点のコレクションを有している。⑵ 1868年にイギリスのヴァルター・ウッドバリが発明・特許を取得した技法で、一般的にウッドバリ・タイプ(Woodbury Type)と称されているが、フランスではフォトグリプティー(Photoglyptie)と称されていた。⑶ Maya TANAKA, Gustave Moreau et lʼestampe, Thèse pour obtenir le grade de docteur de lʼUniversité de Paris IV, 2009.⑶ 国際会議出席① 第17回国際仏教学会期   間:2014年8月18日~8月23日(6日間)場   所:オーストリア、ウィーン大学

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