― 624 ―チをもつ、ほぼ正方形の特別な抽斗、即ち、貴重品用抽斗があり錠金具が別に付く。他の抽斗は、各々、摘みがついている。南蛮唐草文の縁で囲む抽斗表面は、異なる意匠がそれぞれ描かれ、水藻のある水中を泳ぐ鯉、漁師や網や小船の見える松原風景、梅花、桜樹、秋草、葦、紅葉、蝶など日本の伝統意匠が充満されている。また、側面、扉表の周囲には、卍繋ぎなどで二重の縁がつけられて、扉表には見事な尾をもつ鳥、おそらく鶏などが描かれている。さらに、箪笥の外縁の傾斜面を、抽斗縁とは別の形の南蛮唐草文で縁取りしている。南蛮漆器書箪笥の典型的な特徴を持つ、真に多彩で華やかな家具である。蒔絵技法は、上述の洋櫃と同技法であるが、螺鈿片は、ほぼ模様に揃えた貝片で、処々に小さな不定形螺鈿が混じる。金具類は金銅製(銅に鍍金)で線彫で意匠されている。「南蛮蒔絵技法データ収集」は、将来の課題に残す。逆輸入品であっても、まとまった所蔵数をもち、データ撮影にも適した環境を備えた国内の美術館で調査したい。最期に、ヴァチカン文書館長から伊達文書他数資料の原寸大コピーを頂戴し、同図書館長から資料写真代金の八割近い大幅割引という厚遇を頂いた。深く感謝する。〔表1について〕・表で詳細を報告する資料は、すべて原文資料である。・最も遡る天正遣欧使節書状(1585年)〔写真5〕からマレガ文書(1699年)〔写真8-9〕までの17資料。・全資料中の13資料が書状であり、宛先名、差出人署名、花押、朱印などが付く。・書状類は、料紙に金銀箔散らしや金銀泥の描模様の「装飾書状」が12資料ある。・装飾書状にはラテン語ペン書きが2資料含まれ(イエズス会総長宛と伊達書状)で、他は和文墨蹟書状である・装飾のない墨筆資料は、書状が1、キリシタン誓詞1、キリシタン禁制書2資料。・所蔵先は、ヴァチカン文書館、図書館手稿部、同民族博物館、ローマ・イエズス会本部文書館、セビリア市文書館の五箇所である。・ヴァチカン蔵装飾書状はすべてローマ教皇パオロ五世宛である。・ヴァチカン蔵伊達書状に類似するセビリア市所蔵の伊達書状は、切箔散らしに模様描きが加えられている。
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