注⑴ロヒール・ファン・デル・ウェイデン作《七秘蹟祭壇画》(Koninklijk Museum voor SchoneKunsten, Antwerp, inv. 393-5.)についての最近の研究を以下にあげる。Campbell, Lorne / Stock,Jan van der, Rogier van der Weyden 1400-1464, Maître des Passions, Leuven, Waanders Publishers,Zwolle/Davidsfonds, 2009; Campbell., Lorne / Van der Stock, Jan / Reynolds, Catherine / Watteeuw,Lieve (eds.), Rogier van der Weyden in Context, Paris-Leuven-Walpole, Peeters Publishers, 2012.⑵各翼部上部へのトゥルネ市とシュヴロー家の紋章の挿入、および他作品におけるシュヴローの肖像との類似などが根拠とされる。Panofsky, Erwin, “Two Roger problems: The donor of the HagueLamentation and the date of the Altarpiece of the Seven Sacraments”, The Art Bulletin, vol. 33, no.1,March 1951, pp. 33-40. ; De Vos, Dirk, Rogier van der Weyden: the complete works, Antwerp, Harry N.Abrams, 1999, pp. 42-63.〔謝辞〕2015年11月19日にメトロポリタン美術館内のアントニオ・ラッティ・テキスタイル・センターにて、また同年12月8日にはヴィクトリア&アルバート美術館のクロス・ワーカーズにて各館所蔵のタペストリー断片の調査を行った。ここに謹んで謝意を表する。の磔刑図を中心として七秘蹟が行われる教会(祭壇画)が教皇の祝福(タペストリー)のもとに展開される。この構図は全体として、上記の大勅書内容と非常に近い精神が認められる。おわりに本稿では、ロヒール・ファン・デル・ウェイデン作《七秘蹟祭壇画》と《七秘蹟タペストリー》との展示プログラムを踏まえた図像分析と図像解釈を行った。そこで、研究史上はじめて両作品の三次元空間における展示プログラムの想定図を作成した。展示プログラムはコの字型の三次元空間を設定したが、結果として両作品における構成や色、モチーフなどに高い相関性が確認でき、両作品の図像が展示プログラム全体から緻密に練られ、決せられた可能性を新たに提示するに至った。近年特に展示プログラムの問題について議論が活発にされているが、本研究はこの問題を考える上でも意義があるだろう。《七秘蹟祭壇画》と《七秘蹟タペストリー》は、依頼主シュヴローの政治的・宗教的状況がその成立とテーマ選定に霊感源を与えつつも、図像の特徴に関しては展示プログラム全体が考慮された複雑な構成が認められる、非常に革新的な作例と位置付けられる。― 117 ―
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