(注14)、80年代には江西省景徳鎮景泰4年(1453)銘の墓から青花の双耳瓶、碗などが出土(注15)、同じく景徳鎮珠山の西側から宣徳紀年銘のある青花や、正統から天順の間と考えられる磁器が多数出土した(注16)。5、初期雲堂手の文様構成以上のような15世紀中頃の景徳鎮窯の状況を踏まえ、初期雲堂手の様式的特徴について考察してみたい。中国や日本国内に伝世する初期雲堂手の総数は確認されていないが、これは紀年墓からの出土例はあるものの青花に銘を記した例がないことにある。制作年代を出土品との比較や、器形や様式で同定するためあいまいなものも多い。実際、初期雲堂手には、官窯からの出土品も含まれており、民窯だけでなく官窯でも制作されていたことが確認された。このことから、雲堂手様式の青花は、官民それぞれで流行したパターンの一つと捉えることができる。本研究では、初期雲堂手で最も多くみられる大型の壺、人物文が描かれた青花に絞り考察する。碗や盤、特殊なものとして燭台などもあるが、壺形に人物文を配した青花は、器面の空間構成、文様表現に先行する元青花との類似点が認められるからである。・雲形陶磁器の文様のなかでは、主文様に対して副次的な文様として使用されることが多い。副次的とは、主文様に従属し、空間を充填する目的で使われる文様である。とりわけ筆を用いた絵付けが盛んになった磁州窯では、雲形がしばしば登場する。しかし、単体で描かれていると波形などとの判別が難しいものも多い。景徳鎮窯では、宋代の青白磁において彫文様で雲形を表したものが確認され、元青花になると主文様の場面転換として用いられるようになった。絵画上の特に画巻における場面の区切りが陶磁器にも導入されたのである。このような使用例が認められるのは元青花の中でも碗や壺類で、主文様として人物故事文が壺の胴部をぐるりと一周するように描かれている場合に、各場面の間に雲形を配し、次の場面の導入部としての役割を担ったのである。壺を回すと物語の場面が展開するというこれまでの陶磁器にはなかった鑑賞スタイルを確立したのが元青花である。主文様の場面展開には雲形のほか、樹木や岩もみられるが、雲形を用いている例が多いのは、その後雲堂手に引き継がれていく重要な文様と捉えることができる。初期雲堂手にみられる雲形は、場面の区切りとして元青花と同じ使用方法で描かれている場合〔図3部分〕と、主文様の上部に描かれる場合の2種類に分けられる。各― 194 ―
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