・面箪笥D:高56.8 幅59.2 上面貼紙墨書「四号」他・面箪笥E:高57.4 幅59.3・面箪笥F:高57.9 幅59.8 上面貼紙墨書「参号」他・面箪笥G:高80.5 幅74.2 側面貼紙墨書「子二月/能九番/御用分」他〔図4〕・面箪笥H:高83.1 幅75.4 側面貼紙墨書「子二月/能拾番/御用分」他それぞれの面箪笥には「川端」「能」という文字と、「9」「10」などの数字をペン書で記した紙が貼られているが、これは北岡邸にあった御蔵のひとつである「川端御蔵」から熊本城に移された時の記録と考えられる。箪笥の側面や引き出しにあらわされた墨書や貼紙の記録は、少なくとも3つの時期に及んでいる。最も古いと思われるのは、面箪笥A、G、Hの貼紙墨書に見られる「子二月」の年記で、江戸時代後期の道具改めの際の記録と考えられる。しかし、この時期の貼紙や墨書は、破損や墨の薄れ、上から貼られた新たな貼紙によりほとんど判読できない。その次は、昭和22年に面箪笥の道具を改めた際の記録で、引出の貼紙に管理番号と思われる漢数字とともに能面の名称が記されている。最も新しい記録は、1~2桁の番号と能面の名称を筆ペンで記し、修理や移動などの情報を赤ペンで追記した貼紙で、これはすべての面箪笥に貼られている。東京に保管される能面の多くは、現代の新しい面袋や近代の裂地を用いた面袋に収められる。また、かつて使用されていた面袋が別に保管されており、その中には江戸時代の能装束の裂地を転用した古い面袋が見られるほか、袋表に番号と名称を記した白布を縫いつけたものも見られる。東京の面箪笥については詳細な調査は行っていないが、引出に番号と能面の名称を記した紙を貼り、管理されていた様子が窺える。それでは、これらの記録をもとに現存作品との照合を行う。まず、東京保管分の作品については、面裏の右上端にあらわされた朱漆書の番号が手がかりとなる〔図5〕。能面82点のうち、55点の面裏に「壹」から「七十」(1~70)までの漢数字が朱漆であらわされ、狂言面は29点すべてに「壹」から「参拾壹」(1~31)までの番号がふられている(注4)。これらの番号は、欠番はあるものの能面・狂言面それぞれの分類ごとの通し番号となっており、その内容は面袋や引出に記録された番号・名称と一致する。なお、熊本保管分について、朱漆書の番号を有する作品は能面・若男〔表2-48〕の1点のみであるが、本作は元々東京保管分の作品で、近年に熊本保管分の作品と入れ違ったことが確認されている(注5)。つまり、面裏に朱書で番号をあらわす作品はすべて、番号が書きいれられた時点で東京に保管されていたと考えられるので― 336 ―
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