1)金沢大学の学生の調査研修旅行への支援2)ヴァーチャル・リアリティ(VR)・アーカイブによるビザンティン聖堂の保存1)今年度、金沢大学付属国際文化資源学研究センターの研究プロジェクトが、学内研究資金「超然プロジェクト」に採択された。このプロジェクトにより構成メンバーの海外調査派遣、および学生の調査研修旅行支援がなされる。筆者は同プロジェクトの一環として来春3月に学生を伴い、カッパドキアでの調査を行う予定である。とりわけ、ギョレメ屋外博物館は中期ビザンティン聖堂の宝庫であるが、夏期は観光のハイシーズンにあたり、撮影は一切許されていない。ギュリュヤズ氏と来春の調査研修について交渉した結果、氏は全面的な撮影許可と、学生の支援を約してくれた。マケドニアについては、当面確たる研修調査旅行の予定はない。しかし、金沢大学はフィレンツェ、サンタ・クローチェ聖堂の修復プロジェクトで知られており、将来壁画の修復に携わってみたいという学生がいる。そこで、将来的にはカッパドキア以外のフィールドも確保しておく必要がある。そのため、この件に関して、ギョルギェフスキ氏とニコロフスキ氏と協議し、今後かような調査研修旅行が企画された場合、全面的に支援してくれることを約してくれた。さらに、ニコロフスキ氏は、日本人学生とマケドニア人学生が国際交流を深められるように、両国学生による保存修復技術のワークショップ、マケドニア国内のビザンティン文化モニュメントの共同エクスカーション・ツアーの実施等、様々な提案をなしてくれた。9/4、9/10に、国立ネヴシェヒル・ハジ・ベクタシュ・ヴェリ大学観光学部講師エルジャン・カチュマズ氏、および同大学付属国際カッパドキア研究センター准教授アデム・オーエル准教授と会談し、今後の協力関係について協議した。2)VRについては若干の説明が必要だろう。文化財保存科学の成果は目覚ましく、近年では3Dスキャナを使わず、写真のみでVRによる空間の再現が可能になりつつある。VRはデータの集積なるがゆえに、修復前に何度でもシミュレーションできる。旧ビザンティン圏には紛争地帯が多く、コソヴォの修道院のように危機遺産に指定された聖堂や、カッパドキアのように自然的要因により崩壊の危機に晒されている聖堂も少なくない。VRデータには実物の寸法や色まで反映されるため、万が一、聖堂が失われるような事態が生じても、理論上はデータを基に失われた実物の復元さえ可能である。ギュリュヤズ氏はこのプロジェクトに乗り出すことを決定し、筆者に写真撮影を依頼した。現在、ギュリュヤズ氏と筆者はプロトタイプ制作のため、資金獲得に乗り出している。B.大学関連― 516 ―
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