鹿島美術研究 年報第33号別冊(2016)
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1)研究者の相互派遣、共同研究および研究成果の発信2)学生の相互派遣、国際交流1)上述の通り、筆者は来春3月にカッパドキア調査を実施するが、滞在中に同大学で講演を行う。また、ネヴシェヒル大学観光学部、及び国際カッパドキア研究センター共催によるトルコ政府公認ガイドと学生向けのワークショップを行う。また当初は今回の滞在中にも学生向けの講演を行う予定であったが、滞在時期がイスラムの犠牲祭の時期に重なっており、学生の多くが帰省中であることから、先方は学生が集まらないのは筆者に対して無礼であるとの配慮から、この度大学における講演は見送ることになったとの打診を受けた。今回用意していた講演内容は3月の調査中に繰り延べとなったことも、併せて報告しておきたい。9/12夕刻に、ギョレメ観光協会が主催する講演会で、“The Function of the Virgin Eleousa in Tokali Kilise”という題目で、トルコ政府公認ガイドを対象に講演を行った。なお、講演内容は、かつて貴財団の美術に関する調査研究の助成において研究した「カッパドキアの岩窟聖堂における聖母子像の役割」の内容に加筆・修正を加えたものである。2)来春の調査研修旅行では、現在2名の学生が随行することが決定している。ネヴシェヒル大学主催のワークショップでは、彼らに学生だけでなく、トルコ政府公認ガイドとの交流を促し、国際交流を促し、かつガイドたちから調査に有益な情報やノウハウを学ばせたい。C.アウトリーチ活動エレウサ型とは頬を寄せ合うタイプの聖母子像で、これがイタリアで洗練され、優しき聖母マリアというイメージの原型となった図像である。カッパドキアにはイタリア・ルネサンスよりも400年も早い中期ビザンティンの作例が残存しているが、トルコ人ガイドはエレウサ型がカッパドキアに残存する意義を知らなかったため、この度の講演を通して、カッパドキア観光のセールスポイントが増えたと、好評の内に講演を終えた。翌日に有志に請われて、ユルギュップ南方地区の4聖堂において、エクスカーション・ツアーに赴いた。そこで、カッパドキア独自のクロノロジーで言えば、アルカイック期(9C末~10C前半)の聖堂装飾プログラムについて講義を行った。― 517 ―

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