―A Table au Moyen Age (於:ジャン無畏公の塔)―Trésors royaux: la bibliothèque de François Ier(於:ブロワ城)(注9)―DʼAzincourt à Marignan(於:軍事博物館)ちだが、ここでは写字生が残した様々な痕跡を主軸に据えることで、一般には馴染みの薄い文書のみの写本が展覧会の要をなしえており、写本文化やそれを介した当時の社会への関心・理解を促す新たな方法の提示となっていた。パリのジャン無畏公の塔では毎年「中世」に関するテーマのパネル展示が、D.Alexandre-Bidon氏(EHESS)を中心に企画されているが、今年は「食卓」をめぐる諸事項が関連図像に添えられた簡潔な説明文で紹介されていた。中世の食については過去の展覧会でも幾度か断片的に扱われていたが、今回は食事の内容から作法・器具といった食事文化全般が年代記、文学作品、祈祷書など主に15世紀後半の写本に施された図像とともに紹介されていた。来春から開催される「モード」の展覧会も期待したい。量やジャンルの豊富さ、そして写本から印刷本への移行が辿れる点などにおいて傑出しているフランソワ1世の蔵書の大規模な展覧会が、フランス国立図書館との共催で初めて実現された。装丁・版画・デッサン・メダルなども展示され、王室コレクションを総体的に把握できるよう構成されていた。西欧中世の武具は堀越宏一氏(早稲田大学)の業績によって我が国でもよく知られているが、本展覧会ではアザンクールの戦い(1415)からマリニャーノの戦い(1515)にかけての戦術の変遷過程が、武具や兵器といったモノとともに年代記などの写本に描かれた戦闘図像をとおして辿られていた。5、 調査研究(於:国立美術史研究所付属図書館、国立図書館、ポンピドゥーセンター図書館、サント・ジュヌヴィエーヴ図書館)昨年、鹿島美術財団の助成によってカルーセル・グルベンキアン美術館で行った『イザベル・ド・ブルターニュの時祷書』(LA.237)の調査に基づき(注10)、同写本に認められるジル・ド・レの弔いの表象に関する論文の最終確認を行った。ただし、本論考は先行研究で提示されてきた写本の制作年代・制作意図・図像解釈などを覆すことになるにもかかわらず、写本を再度実見せねば証左となる諸要素の確認が行えな― 521 ―
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