鹿島美術研究 年報第33号別冊(2016)
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1.2015年度援助⑴海外派遣①日本人が愛した印象派展 調査と報告期   間:2016年2月19日~2月24日(6日間)派 遣 国:ドイツ連邦共和国報 告 者:東京大学大学院 総合文化研究科 教授  三 浦   篤開催の経緯ボンのドイツ連邦共和国低術展示館(budesukunsthalle,Bonn)で開催されている展覧会「日本人が愛した印象派、モネからルノワールへ」は、これまでヨーロッパではほとんど知られていない日本の美術館・コレクションが所蔵するフランス近代絵画の優品をまとまった形ではヨーロッパで初めて紹介する企画である。そもそも、フランス絵画に関しては、欧米の美術館から作品を借用して日本で展覧会を催すのが通例であり、逆に日本にあるフランス絵画を欧米の美術館で展示するという発想そのものがなかったと言ってもよい。もちろん、古美術にせよコンテンポラリー・アートにせよ日本美術の展覧会を欧米で開くことはいくらでもあるが、本展の場合、主体はあくまでも印象派を中心とするフランス近代絵画である点が異なっている。展覧会の最初の企画はドイツ側からもたらされた。展覧会コーディネーターのデットマール・ウエストホフ氏に伴われて、ドイツ連邦共和国芸術展示館の前館長ロバート・フレック氏(現在はデュッセルドルフ美術アカデミー教授)が来日され、フランス近代絵画のコレクションを有する美術館を調査するとともに、東京藝術大学大学美術館教授の薩摩雅登氏に相談され、私に展覧会のゲスト・キュレーターを依頼されたのである。ドイツ側のスタッフとしては、他に事務局長のベルンハルト・スピース氏、展覧会事務担当のスザンヌ・アンネン氏、またコレクションがない芸術展示館は展覧会ごとにゲスト・キュレーターを招いているが、今回はベアーテ・マルクス=ハンセン氏(ドイツ近代美術を専門とするインディペンデント・キュレーター)が中核メンバーとして加わった。その後、新館長のライン・ヴォルフス氏がスピース氏とともに― 533 ―Ⅲ.「美術普及振興」研究報告

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