鹿島美術研究 年報第33号別冊(2016)
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注⑴①は「平家物語絵巻」(林原美術館蔵)、②は「平家物語図屏風」(岡田美術館蔵)、③は「平家物語図」(『日本屏風絵集成』第5巻所収 図版番号33~38)、④は「一の谷・屋島合戦図屏風」「一の谷・屋島・壇ノ浦合戦図屏風」など、⑤は「平家物語 二度之懸図屏風」(静岡県立美術館蔵)などがある。⑵三、四に関しては伊藤悦子氏の指摘による(伊藤悦子「「源平合戦図屏風」の一考察─いわゆる「一の谷・屋島合戦図屏風」の分類方法について─」『軍記と語り物』第50号、軍記物談話会、2014年、54頁)。⑶川本桂子「『平家物語』に取材した合戦屏風の諸相とその成立について」『日本屏風絵集成』第5巻、講談社、1979年、139頁⑷田沢裕賀「平家物語 一の谷・屋島合戦図屏風の諸相と展開」『秘蔵日本美術大観Ⅰ大英博物館Ⅰ』講談社、1992年、271頁⑸須賀隆章「智積院蔵「一の谷合戦図屏風」をめぐって」『軍記と語り物』第46号、軍記物談話会、2010年、76頁⑹展覧会図録『特別展 とやまの寺宝─花鳥山水お寺に秘された絵画たち─』富山市佐藤記念美術館、2014年、54頁⑺『源平盛衰記』(七)三弥生書店、2015年、45頁より引用⑻前掲注⑷田沢氏論考⑼拙稿「近世における「一の谷・屋島合戦図屏風」の生成とその展開─耕三寺博物館所蔵「源平合戦図屏風」を中心に─」『学習院大学人文科学論集』24、学習院大学大学院人文科学研究科、2015年、37頁⑽原口志津子「とやまの寺宝─花鳥山水お寺に秘された絵画たち─」前掲注⑸展覧会図録、9頁⑾阿部泰郎(監修)蔡佩青(編)『城端別院善徳寺蟲干会』真宗大谷派城端別院善徳寺、2014年、45頁⑿高松良幸「紀伊狩野家の画業」『和歌山県立博物館研究紀要』第9号、和歌山県立博物館、2003年、4頁⒀展覧会図録『歴史姉妹都市締結四十周年記念 宇和島伊達家の名宝─政宗長男・秀宗からはじまる西国の伊達』仙台市博物館、2015年、57頁⒁例えば、智積院本、大英本、善徳寺本の場合、熊手を持つ武士の隣には太刀を抜こうとする武士が描かれている。智積院本系統作例が繰り返し制作されていくのと同時に、テキストに縛られず、同時代絵画を取り入れた多様な「一の谷・屋島合戦図屏風」が次々と制作されていく。当初は、教育的な役割を果たしていたものが、次第に物語を正確に描写することは重視されなくなり、武家の室内調度として、武家が所有すること自体に意味を持つようになっていったのではなかろうか。現時点では現存作例を考察したうえでの推測にすぎないため、引き続き、新出の平家絵とそれが伝来した場との関係を中心に考察を進めていきたい。― 52 ―

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