あったものを一度掛軸に表装し、再び屏風に表装したもので、その過程で2扇分が失われた可能性がある。したがって、李亨禄の冊架図はほとんどが300cm以上で横に長いのが特徴である。実際、他の冊架図においても作品⑨㉙㉚㊴以外の全てに当てはまる。❷の点では、李亨禄のものは本紙のみで130cm台から170cm台までの高さがあり、表装の部分を入れると凡そ200cmに近い背の高い屏風である。李亨禄以外の冊架図も15点が130cm以上で、李亨禄の冊架図と同じくらいの高さが多い。指摘通りであるならば、宮廷画員として活躍した李亨禄のものを含む背の高い冊架図は、宮廷用として制作された可能性があると思われる。しかし、作品㉞のように、本紙だけなら62cmにすぎないが、表装をいれると、160cm以上の高さがあるものもあるため、本紙だけで冊架図の使用場所について判断することは難しい。さらに、現在の冊架図のほとんどが再表装されているため、当時のものがどのような状態であったかについても確認することは難しい。❸の点では、李亨禄のものも⑤を除くすべてが、紙本である。他の冊架図も、絹本もあるが圧倒的に紙本が多い宮廷で用いられた絵画は、一般に絹本であることを考えると、李亨禄のものも、民間で用いられた可能性が考えられるが、現存する冊架図のほとんどが紙本であり、朝鮮時代の王室で使用されたものを所蔵するソウル故宮博物館の冊架図も紙本が多いことを考えると、冊架図というジャンルは絹目が見えることを嫌って、紙本にこだわった可能性が考えられる。❹は、筆者が実見できた李亨禄の4点を含む24点は、確かに伝統的な岩絵具で彩色されている。❺の点では、李亨禄の⑤と⑥に匹敵するが、その以外の冊架図の9点にも当てはまる。以上のことから、形式、大きさ、支持体、技法の点で、李亨禄の冊架図だけに固有の特徴は確認できない。第3章 モチーフ冊架図のモチーフについては、以下の5つが指摘されている。❶実物の棚を描いている⒜~⒣。❷棚は3段もしくは4段構成である⒜⒞。❸モチーフの分類については、冊架図を含む冊巨里(チェッコリ)に関して、器物がもつ意味を基準に、⑴文房清玩の趣味が反映された器物、⑵祈福的な意味を表す器物、⑶消費・遊び文化の拡散と関連する器物、⑷新しい文物に対する好奇心が反映された器物のように4つに分類するパターンと器物の種類で⑴本と器物(文房具、陶磁器、置物)⑵花、⑶果物のように3つに分類するパターンがある⒠⒡(注5)。❹李亨禄の冊架図と違って、吉祥的な意味を持つ器物が多く描かれる冊架図は、民間で使用された可能性が高い⒠⒡⒢。❺共通するモチーフを描く冊架図は、同じ粉本を使用した可能性がある⒠⒡。― 175 ―― 175 ―
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