注⑴『美術のゆくえ、美術史の現在 日本・近代・美術』(平凡社、1999年)、『語る現在、語られる過去 日本の美術史学100年』(平凡社、1999年)、『日本における美術史学の成立と展開』(東京国立文化財研究所、2001年)、『日本研究』第26号(国際日本文化研究センター、2002年12月)等。近年、『美術の日本近現代史─制度・言説・造型』(東京美術、2014年)、『「美術」概念の再構築─ 「分類の時代」の終わりに』(ブリュッケ、2017年)が刊行された。⑵例えば、前掲書『日本における美術史学の成立と展開』は、討議録「書は芸術か」を掲載している。また、貴重な研究成果として、高橋利郎氏の『近代日本における書への眼差し─日本書道史形成の軌跡』(思文閣出版、2011年)がある。高橋氏は『稿本日本帝国美術略史』や『真美大観』、『東洋美術大観』において「書」がほぼ取り扱われていないことに言及した上で、主に古筆研究史を詳述している。⑶拙稿「東京美術学校における小杉榲邨の「書学」講義─窪田喜作筆記ノート翻刻─」『東アジア書教育論叢』第1号、東京学芸大学書道教育研究会、2011年12月。同「小杉榲邨『大日本美術史』研究─日本書道史成立の萌芽─」『大学書道研究』第6号、全国大学書道学会、2013年3月。⑷拙稿「大正・昭和戦前期の習字教員養成における臨書・書道史学習の導入」『書写書道教育研究』第30号、全国大学書写書道教育学会、2016年3月。⑸当時の「宝物鑑査表」は古文書、絵画、彫刻、美術工芸、書蹟の分類で鑑査数を掲載(『東京国立博物館百年史』東京国立博物館、1973年)。帝国博物館は明治23年に列品分類を「書画」Ⅰ期は「書道史」形成の萌芽期であった。「美術史」に「書」を含めない傾向が強い中、一部では「書」を「美術」とし得る例証として「書道史」が編まれ始める。この総論の担い手は、史学形成に携わっていた国学者達であった。続くⅡ期は、書学が独立して振興していく時期である。書家達は書学振興の必要性を自覚し、「書」の「研究」を目的に謳った『書苑』を刊行した。『書苑』は『国華』と近似した形式が採られている。この『書苑』刊行は書学において大きな転換点であり、金石、古文字、古筆、書論等の各論が進展することとなった。さらにⅢ期は、「書道史」と書学の普及が図られた時期であった。「文検」習字科の試験内容に「書道史」が組み込まれた影響で、「書道史」単著の刊行が相次ぐ。また、平凡社は、『世界美術全集』とは別に、独立した『書道全集』を刊行する。『書道全集』は『世界美術全集』と同形式を採っており、書家達はそれまでの総論・各論の成果を『書道全集』に結実させた。近代日本において、「書道史」は「美術史」の形式を後追いし、並立を試みながらも、結果として独自の進展を遂げていくのである。この独立と普及の段階的特徴は、「書道史」形成のみならず、書家達の書論や展覧会活動とも通底している。この関連性については別稿にて論じたい。― 191 ―― 191 ―
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