(6)【阿輸沙国婆羅門】〔図6〕図像: ①炎に包まれた鑊が割れ、蓮池へと変わる。それに向かい合掌する裸体の男。(7)【劉薩荷】〔図6〕図像:獄卒に髪を掴まれ業鏡を見せられる裸体の男と傍らの鹿、鳥類。先行収録文献:『釈門自鏡録』巻上(注13) 、『法苑珠林』巻第86(注14)内容:(8)【姜略】〔図6〕図像:頭のない5羽の鳥、後ろ手に縛られる裸体の男と業鏡を指さす獄卒。先行収録文献:『冥報記』巻下(注15) 、『法苑珠林』巻第64(注16)内容:その後普賢像を供養し、出家する。②閻魔王の前で合掌する裸体の男。先行収録文献:『要略録』巻上(注11) 、真福寺本『戒珠往生伝』巻下(注12)内容:阿輸沙国婆羅門は不信心であったが、妻の勧めにより1日1度念仏を唱えていた。後に婆羅門は死亡し、鑊湯地獄に落ちるが念仏を唱えると地獄が清涼の蓮池となり、それを聞いた罪人たちは往生する。婆羅門は羅刹王にこの奇譚を人々に広めるよう命ぜられ現世へ還される。後に婆羅門は往生する。阿輸沙国婆羅門の説話は、中央幅右下方(①)とその上部閻魔王の左方(②)の2つの図像で表される。劉薩何は狩猟を好んだ。俄かに病を患い死亡し、2人の沙門に連れられて寒氷地獄や刀山地獄などを巡歴する。生前に鹿や雉を殺した罪で裁かれるが、巡歴の途中に観音菩薩により施福の功徳についての教えを受け応報を軽減してもらっていたため軽い罰で済む。現世へ返された後出家する。隋代、鷹揚郎将である天水の姜略は生前狩猟を好んだ。病に罹り、床を囲繞する無数の無頭の鳥を見る。目覚めた後これらの鳥の追福を行い許され、以後終身酒肉を断ち、不殺生を貫いた。― 283 ―― 283 ―
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