一方で、佐藤氏は、同会で、鑑賞教育を中心に紹介や研究を行って来たのだが、それまでの美術館を変えたのはワークショップではないか、と述べている。これも、長田氏と一致する意見として注目すべき点ではないかと考える。4)佐藤友哉氏(元・北海道立近代美術館)へのインタビュー場所:北海道立近代美術館日にち:2017年4月22日(土)インタビュアー:鬼本佳代子1977年開館の北海道立近代美術館は、おそらく全国的にも非常に早い段階でファミリー向けの展覧会「子どもと親の美術館」を開催した館である。インタビューよると、当初から、スローガンとして「行動する美術館」を掲げ、展覧会を見に来る利用者を待つだけでなく、もっと広げて行こうという考えがあったとのこと。その基盤を作ったのが、準備室から館の運営に携わった倉田公裕氏であった。倉田氏は、山種美術館の学芸部長であったが、同館の準備室室長に就任し、佐藤氏曰く「博物館学的な美術館像」を持ち込んだ。「子どもと親の美術館」もそのような当初の機運から、入門的な展覧会企画として出てきたとのこと。ちなみに、組織も当初から「学芸課」と「普及課」に分かれており、開館してすぐに移動美術館をやることなども考えていた。なお、普及課には学校教員を経験した学芸員も何人かおり、その人たちが中心に活動を行っていたとのこと。とはいえ、「子どもと親の美術館」も移動美術館も、プロジェクトチームを作ってチーフを決め、そのチーフを中心に、普及課・学芸課と関係なく、一緒に作って行くというスタイルであり、現在もその形は健在であるそうだ。「子どもと親の美術館」について言うと、ガイドブックはもちろんのこと、展示もハンズオンに近い展示(佐藤氏曰く「実験模型」)を作ったりしていたようである。また、同企画は冬の企画であったが、1986年頃から、夏にも「サマーミュージアム」という子ども向けの企画を行うようになった。この企画は、数回しか続かなかったが、その後、「ミュージアムスクール」や「A☆MUSE☆LAND」という企画に変わる(注7)。非常に興味深かったのは、佐藤氏の意識としては、これらの企画は「展覧会の一つ」として実施しており、対象を子どもにしぼった場合に、どうすれば彼らが楽しめるかということは考えたが、教育的か否かという認識はあまりなかったとのこと。もう一つ、印象的であったのが、地域の学校との関わりである。「A☆MUSE☆LAND Tomorrow」というのを2008年から行ったが、これは学校教育とタイアップした企画― 322 ―― 322 ―
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