鹿島美術研究 年報第34号別冊(2017)
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(6) 第22章 ピカール・ル・ドゥ《ベルヴィル=メニルモンタン街》 Picart Le Doux, Belleville-Ménilmontant(エッチング、ルーレット・紙/イメージサイズ14.0×24.0)〔図12〕(7) 第22章 ロール=ステラ・ブリュニ《ベルヴィル=メニルモンタン街》 Laure-Stella Bruni, Belleville-Ménilmontant (エッチング・紙/プレートサイズ34.2×26.5)〔図14〕横長の画面の上半分は空が広がり、中央付近には塔がそびえ、うっすらと建物の屋根が眼下に広がるように描かれている。画面下半分には、植え込みのある公園のような場所が描かれている。最も手前には、左右に伸びる歩道があり、道端のベンチには男女が寄り添うように座っている。これは、19区の「ビュット=ショーモン公園Parc des Butte Chaumont」内の風景と推測される〔図13〕。地下鉄「ボザリBotzaris」駅を地上に上がった付近から、ビュット=ショーモン公園に入ると遊歩道が園内に伸びている。この辺りは広く起伏のある公園内でも高台にあたる。東側の遊歩道を歩きながらその中ほどで、西方向を見ると、手前には歩道のベンチ、その向こうには塔が目に入る。この塔は、公園中央付近の岩山の頂上に建てられた、神殿を模したあずま屋である。採石場であったこの一帯は19世紀後半に人工公園とする工事が行われ、1867年のパリ万国博覧会の年に完成した。建造されて70年経つ(1937年当時)公園が市民の憩いの場として親しまれていることがこの作品から伝わる。縦長の画面には、手前に水面が、その奥には急な傾斜で盛り上がり木々の生い茂った場所が描かれている。画面右上の角には、小さな塔のような建造物がうっすら描かれている。また、手前の水面の上に渡された橋のようなものが、右手の山地の上の方に向かって伸びている。19区の「ビュット=ショーモン公園 Parc des Butte Chaumont」内の風景である〔図15〕。同じ章のル・ドゥによる挿画作品は、公園の東側の高台からの視点であったのに対して、この作品は公園の西側の低地から池の風景を描いている。高台から遊歩道沿いに下ると人工の池に至る。池の周りにも遊歩道がめぐらされており、中央にはやはり人工の岩山があり頂上には神殿風のあずま屋が建てられている。この作品は、遊歩道から池を正面に見たもので、画面中央のうっそうとした緑は人工島である。上部右手の塔のように見えるものはあずま屋である。池の上の、島に向かって伸びる線は、池の岸から島に渡るための歩道橋である。― 331 ―― 331 ―

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