鹿島美術研究 年報第34号別冊(2017)
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⑴会議出席①ロダン、衝撃の波動(Rodin, lʼonde de Choc)期   間:2017年3月16日~24日(9日間)出 張 国:フランス共和国報 告 者:法政大学 非常勤講師  安 藤 智 子発表内容本会議の発表では、フランス人でありながらイギリスで活動をしていた画家であるアルフォンス・ルグロとオーギュスト・ロダンとの交流において、ロダンがルグロに対して与えた衝撃の全容を明らかにすることを試みた。画家ルグロは、彫刻家ロダンに芸術家として尊敬を払い、1880年代前半にイギリスでロダン作品の初めての普及に努めた。つまり、ルグロが芸術家とプロモーターという二つの側面において、ロダンから多大な影響を受けたと考えられる。そもそもルグロとロダンとの出会いは、1850年代に、彫刻家ジュール・ダルー、画家のアンリ・ファンタン=ラトュール、ジャン・シャルル=カザンらとオラス・ルコック・ド・ボワボードランのアトリエで一緒に学んだことにある。ルグロを中心としたネットワークは、フランスとイギリス両国での芸術家、コレクター、ジャーナリスト、政治家という広がりを見せ、ロダンの彫像が英仏海峡を渡りイギリスで認知される時に、有効に機能したと思われる。ロダンがルグロに与えた衝撃は、ルグロによる普及活動を促進し、またその衝撃の余波は、ロイヤル・アカデミーへの異議申し立て、さらには、フランスでのルコック・ド・ボワボードランのアトリエ出身の芸術家たちの社会的成功とも繋がっているということを論じた。つまり、このネットワークの働きにより、ルグロによるロダンの普及が単に知り合いの芸術家や芸術愛好家たちに旧友ロダンの作品を紹介するにとどまらず、作品を公的な場に展示し、それらを活字媒体によって周知するという社会的な芸術活動へと展開を見せたと考える。さらにこのルグロのネットワークの形成過程に― 479 ―― 479 ―Ⅱ.「美術に関する国際交流援助」研究報告1.2016年度助成

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