鹿島美術研究 年報第34号別冊(2017)
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②海外における日本文化研究についての国際シンポジウム─その現状と展望他の発表について今回は地域と時代を超えて網羅的なロダン受容の発表の場であった。とくに多くの発表がなされたのは、ドイツにおけるロダン受容及びロダン彫刻に対する批評家の反応であった。それに関連する発表では共通して、ベルリンを中心に20世紀の初頭活躍したドイツ人美術家ユリウス・マイアー=グレーフェの存在が語られていた。今まではドイツに印象派やポスト印象派の画家たちを紹介した美術史家としての認識しかなかったが、近代彫刻史におけるフランス美術の受容という観点からも、マイアー=グレーフェの再評価が必要であると感じた。また、時代を超えて、いかにロダンの彫刻が現代彫刻のインスピレーション源になっているかということは、ロダン美術館館長のシュヴィヨ氏の講演でも解説があった。ロダン没後100年を記念した展覧会会場の正面入口では、ロダンの《考える人》に並び、現代ドイツのアーティスト、ゲオルク・バゼリッツの《人々は0を選んだ》(2009年)の巨大な木彫が展示されていたことが象徴的であり、ロダン作品の現代にまで及ぶ影響力が示されていた。期   間:2017年7月10日~20日(11日間)出 張 国:イギリス連邦報 告 者: 千葉市美術館 館長イーストアングリア大学日本学センター(Sainsbury Institute for the Study of JapaneseArts and Cultures)は、2017年7月12日から14日まで、イギリスのノリッチ (Norwich) で、海外における日本文化研究、特にヨーロッパを中心とした日本美術の研究の現状と展望についての国際シンポジウム (International Symposium on Japanese Cultural Studies outside of Japan: Its Current Status and Future Perspectives)を開催した。一昨年度から準備してきたもので、報告者は発案段階からこれに関わり、シンポジウムでは、河合が基調報告、島尾がクロージングリマークスを担当した。1.シンポジウムの背景と目的この企画の目的は、日本美術に関わる欧米とくに欧州の中堅・若手研究者が集ま― 481 ―― 481 ―河 合 正 朝 学習院大学 文学部 教授  島 尾   新

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