いての特別観覧が行われた。学生を3グループに分け、三つの部屋を交替に行き来しながら、各学生が希望を出した作品について、英語で簡単な説明を行うとともに、作品を前にしての質疑応答が行われた。作品に対する接し方、作品のどこをどのように見るのかといった作品把握の方法の多様性が学生たちに意識され始めたように感じられた。同日夕刻からはハーバード大学近くのレストランにて歓迎ディナーが開かれた。3月11日(土)午前9時より、ハーバード大学ライシャワー記念日本学研究所を会場とし、参加学生による研究発表が行われた。当日の発表者は12名。概ね時代順に、三つの発表をひとつのパネルとし、各パネルの司会進行はハーバード大学の大学院生が交替で務めた。発表題目は藤ノ木古墳出土の馬具から、玉虫厨子、中世の絵巻を経て、近世絵画、近代の台湾美術展覧会へといたる時代、内容、研究方法ともに多岐にわたるものとなった。また、当初の質疑応答において、日本側学生への質問は日本学生が、アメリカ他の学生への質問はアメリカ他の学生が、前者は英語に日本語を交えて、後者は英語でという少し偏った様子が見られたが、徐々に双方の学生に対し英語を基本にお互いが質問するという方向へと変わり、研究上の交流が進むさまが看て取れた。3月12日(日)も午前9時より11名の研究発表が行われた。内容は近世から近代へと広がり、その対象とする作品も18世紀京都画壇の曽我蕭白、円山応挙から浮世絵、黄表紙、近代の博覧会等、内容とともに研究方法の多様性がはっきりとあらわれ、学生同士の質疑も盛んに行われた。研究発表終了後の総合討議は、当初の予定を大幅に超過する約2時間にわたって繰りひろげられた。はじめに日本側学生2名、アメリカ他学生2名が問題提起を行い、続いて「客観的な美術史がありえるのか」、「作品が作られた時代と現在とで作品への接し方はどう変わるのか、われわれはどうあるべきなのか」、「作品や資料にどのようにアクセスすべきなのか」、「ネットで公開されている情報と実際に作品や資料に触れることとの違いはどこにあるのか」、「美術史研究の意味とは」といった内容について英語・日本語を取り混ぜて、深く熱心な議論が繰り返された。また研究発表両日にわたり、実行委員のほか、日米文化教育交流会議(カルコン)事務局長・伊藤実佐子氏、同会議委員(京都国立博物館副館長)・栗原祐司氏、日米友好基金専務理事・ペイジ・ストリーター氏、ボストン美術館スタッフ等が熱心に聴講された。3月13日(月)午前10時より、ボストン美術館において事前に学生が希望した所蔵― 492 ―― 492 ―
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