鹿島美術研究 年報第34号別冊(2017)
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品の特別観覧が行われた。館長マシュー・テイテルバウム氏による歓迎の挨拶の後、実行委員であるアン・ニシムラ・モース氏の御高配により、「法華堂根本曼陀羅」「平治合戦絵巻(三条殿夜討巻)」「吉備大臣入唐絵巻」等、ボストン美術館における日本美術コレクションの白眉とも言うべき作品多数を実見し、学生たちもそれぞれに作品自体、作品の見方、描き方等、様々な観点から議論を交わしつつ食い入るように作品に見入っていた。あわせて、リピット教授、実行委員である東京大学・髙岸准教授、神戸大学・増記准教授、東京文化財研究所・皿井主任研究員等により、各作品に関する最新の研究状況などの説明が行われた。また、ボストン美術館における日本絵画の修復について、フィリップ・メレディス氏、上田・ターニャ氏により工房において特別のレクチャーがあり、あわせて実行委員である文化庁・朝賀主任文化財調査官から、作品の構造、伝世の間にどのように作品が変わって行くのかといった修理の過程ではないと見えない情報が学生たちに示され、作品への新しい見方を得たように感じられた。同様の光景は、15日のメトロポリタン美術館の東洋絵画修復工房におけるジェニファー・ペリー氏、山﨑雅信氏のレクチャーの折にも見ることができた。また、この特別観覧の間、在ボストン日本国総領事・道井緑一郎氏夫妻ほか、総領事館スタッフが視察された。同日午後6時より、在ボストン日本国総領事公邸において、総領事夫妻主催の立食形式によるディナーレセプションが行われ、総領事、モース氏、リピット教授、実行委員であるハーバード大学・メリッサ・マコーミック教授のスピーチがあり、JAWSが日米交流上に有する高い意義についてコメントがあった。3月14日(火)、当初予定ではニューヨークへのバス移動及びニューヨークにおける美術館見学等とされていたが、当日未明からの暴風雪により実行委員会において移動は危険と判断し、移動を一日延期することとなった。日本側委員及び学生は終日ホテル内で待機することとなった。3月15日(水)、天候が回復したため、午前5時ボストンを出発し、バスにてニューヨークへ移動。午前10時よりメトロポリタン美術館における日本美術特別観覧を同館・ジョン・カーペンター日本美術部長の御高配により実施した。学生の研究発表の対象となった作品も含む多数の名品がならべられ、各学生による簡単なレクチャー、カーペンター氏による質問とその応答等、時間の許す限り作品をめぐる建設的な議論がかわされた。同館では、午前中に特別観覧、午後は館内の自由見学としたが、予定変更による時間不足のため館内の多くの作品を見残す形となったことが学生たちに悔やまれた。― 493 ―― 493 ―

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