において共通するモチーフが見られるほか、楼閣が水面に建つという空間構図もある程度類似している。また、皇后の場面〔図4〕に関しては、演奏の女性たちに囲まれて踊る女性は、台北1605本の①が1人であるのに対し屏風が2人と、人数には違いがあるものの、モチーフとして大略類似していると言ってよい。さらに、鳳凰船の場面〔図5〕も、①と屏風を比べると、乗っている女性の行動は異なるが、同じ発想に基づいたモチーフであることは明らかである。さらに、南京博物院所蔵の黒漆嵌螺鈿園林仕女図屏風〔図6〕も見てみよう。同屏風は制作時期が明晩期といわれており、全12扇からなるものである。画面に描かれている内容は山西省博物館所蔵の屏風とおおむね同様のため、「漢宮春暁」を主題にしたものと考えられる。また空間に注目すると、山西省博物館所蔵の屏風に比べ、さらに高所からの俯瞰の視点を取り、楼閣がすべて画面に収まるように構成されており、台北1605本の①に近い印象を受ける。さらに、楼閣を拱橋で繋ぐ構成も台北1605本の①に類似している。以上より、台北1605本の①に描かれた宮室の場面は、明代末に作られた漢宮春暁図、特に屏風仕様の漢宮春暁図諸本に類似しており、それらとモチーフを共有しながら、新たな宮室のイメージを構築したと考えられる。2、②の場面について②の場面は、「上林賦」を主題に制作された絵画に共通するモチーフが見られる。仇英は昆山の大富豪周鳳来の依頼を受けて、数年をかけて16メートルを超える長巻の「子虚上賦図」を制作した（注13）。後にその模本が大量に作られ、宋元代名家の作と詐称されるものすらあった。仇英の原本は現在に伝わっておらず、模本作が蘇州片として幾つかの博物館に所蔵されている。台北故宮博物院には元人に仮託した「上林羽猟図」が1巻、伝仇英「上林図」が2巻、計3巻が所蔵されている。ここから、元人に仮託した「上林羽猟図」を取り上げて検討したい。「上林羽猟図」は絹本着色で、縦が47.5cm、横が1298.2cmの典型的な青緑山水画巻である。主題である「上林賦」は、前漢の司馬相如が武帝のためにつくった天子遊猟の賦である。本巻は「上林賦」の内容を7段に分けて絵画化したものである。「上林羽猟図」において、台北1605本の②の場面に共通しているのは第3段に描かれた天子の庭園である上林苑の場面〔図7〕である。海辺から少し離れた峰々が重なる山間に宮室が聳え立つように描かれており、中にいる女性たちは外を眺めたり語らったりしている。また、宮室の背後には宮殿の屋根と城壁が霞に隠れながらも見え、― 92 ―― 92 ―
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