の丸紋や花の丸紋は人気のあった文様のようで、いくつかの作品を散見することができる。この作品は、鳳凰という文様の性質から考えて、王室などに近い身分の高い者が着用していた可能性も考えられるが、文様と着用者の階級については、今後さらに考察を深める必要があり、一つの課題である。単衣の両面染(裏表に型染めが施されている紅型)が2点、白地の紅型が綿、浅葱地は麻の衣裳である(E13731、E13753)〔図2〕。どちらも流水に杜若文様の大模様型である。いずれの紅型衣裳4点とも琉球の仕立て方の特徴である、広幅の衿を表に折り返して着用する返し衿になっていること、袖付けに三角のマチがあること、身丈が日本の着物より短く、対丈(おはしょりをしない男性のような着用法)で着用すること、衿下に上げがあることなどから、琉球本来の形状を残した貴重な作品であることが確認できた。仕立て直しなどが行われていない、オリジナルの状態で保存されていた。1点は引き解きといって、衣裳の縫い糸が外され、身頃、衿、袖、衽がそれぞれバラバラに保存されている衣裳であり、袖付けのマチを含む、全てのパーツが揃っていた。細模様型(小紋柄)の袷仕立てで、千鳥に竹の文様と観世水のような流水文様に貝と思われる意匠が染められている。1-2.絣(縞)衣裳について9点の絣衣裳、2点の縞の衣裳のうち、6点がワーナーの収集品である(縞1点)。手嶋と称される士族階級の女性が着用した絣と格子の袷の衣裳は、経糸に絹糸、緯糸に絹糸と綿糸を使用した特徴的な衣裳である(E13733)〔図3〕。2点は芭蕉布の絣衣裳である。目の覚めるような黄色の芭蕉布の絣衣裳は、琉球の王家に遺された作例以外に確認できていない(E13736)(注7)〔図4〕。黄色地の絣衣裳は綿のものが松坂屋染織コレクションにも確認できるが、これほど質の良い芭蕉の糸を使用した絣衣裳は大変珍しい。沖縄では中国文化の影響から、黄色は国王など位の高い人物の色と認識されており、琉球王家であった尚家にも、黄色の紅型衣裳や絣衣裳が遺されている。この絣衣裳もかなり身分の高い人物の衣裳であった可能性が考えられる。このほかにも綿の白地に赤糸で格子を織り出し藍で絣を表す絣衣裳や白と藍で石畳文様を表す経緯絣の衣裳など、いずれの絣衣裳も極めてクウォリティの高い作品であり、コンディションも良く、形状もオリジナルの状態をとどめていた。1点白地に縞の衣裳は大きさから男性が着用したと思われるが、大変大きな衣裳で― 102 ―― 102 ―
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