シュ8)、外型は肌土、中土(メッシュ28程度)、荒土(メッシュ8))を用い、原型には蝋(蜜蝋と松やに、重量比1:1、ただし、手や道具への蝋の離型として使用した食用油が混ざる)を用いた。芯棒は鉄芯(0.952cm角、長さ50cm)、木芯(丸棒直径4.5cm、長さ27cm)を組み合わせて制作する。鉄芯は、加熱し一晩置いて焼鈍しする。作例の現状に合わせて下端を17.4cm切断し、γ線画像を参考に叩き曲げた。二像で使用されている鉄芯は先細りのため上方を削る(0.7×0.9cm)。木芯は、焼成前に抜き出す予定で上方をわずかに細くし、土の離型も考え食用油を塗るが、土の摩擦が思いのほか強く、抜き出すことは出来なかった。地金は、銅(JIS規格、C1100)28500g、錫(99.99%)1443gをサラ合わせする。公表された二像の成分(注8)と、鋳造の際の錫の気化を考慮し、錫をやや多めに配合した(注9)。制作工程は、中型、蝋原型、外型、鋳造、仕上の順に制作する。この手順に沿って以下に詳細を記す。制作(中型)中型は荒土と1センチ程度に切った藁縄をほぐして混ぜたものを利用した。藁は夏の熱気で腐りやすく、繊維として土に馴染みやすい。芯棒は、木芯(高さ27cm(21cm+巾置6cm))の上端、3.8cmに鉄角棒を結びつけた。なお9mmの鉄芯は太く、鉄芯の強度を考えると首より上方は5mm程度の太さで十分であろう。半跏思惟像とりわけN163、N164では、台座と上体の中心軸が前後にずれるため、台座の中心軸に木芯、頭・上体の中心軸に鉄芯を入れた。鉄芯は木芯の上端に括り付ける。木芯は制作用の塑造板に釘で固定した。前傾する鉄芯を垂直に立てるために添え木の役割を果たす。また、像側面からみた頭部の中心軸は、台座の中心軸(木芯)のほぼ延長上にある。中型には、ガスの抜け易さが求められる。像内奥の通気性を重視し、特に量の大きい台座内部はガスの抜け孔として中空に制作する必要がある。台座中心に立てた木芯は、鋳型の焼成後の通気口を兼ねる。鉄芯は頭頂辺りで蝋原型から突き出し、中型を固定させることとした。実際の二像の鉄芯は、現状下端を切除しているが、その切除された鉄芯下端から地付きまでの長さは、それぞれの像内に残る鉄芯の長さと対応する。二像における像内部の鉄芯はお互いに転用する事が可能である。この、芯棒に対して荒土をつける〔図1〕。また5から6cmの巾置を予め制作した。中型制作の段階では、完成形態の頭部、体部、台座の比率は、ほぼ意味をなさなかっ― 134 ―― 134 ―
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