た。いかに同形の中型を造るかは、重要な問題である。その他、土の乾燥でのヒビが生じ、土をつけ直している〔図2〕。制作(蝋原型)上記の中型に、蝋板の貼り込みと造形を行なう〔図3〕。1cm程度の蝋板を貼り込み細部を造形する事としたが、厚さ1cmの蝋板は加熱の加減が難しく扱いづらい。実際には薄い蝋板を数回重ねて厚みをつけたと推測する。今回、顔面、裙、台座背部の懸け布は、別で制作したシリコン型から複製した細部を貼付し造形を省略したが、貼付後修整が必要であった。また、顔面、上半身部分が他より肉厚になった。光背支持枘は、後頭部に孔をあけ枘を挿入し、蝋で孔を塞ぎ枘を固定する。光背支持枘は蝋原型の段階で取り付けることで、光背の角度などを確認、調整することができる〔図4〕。型持ち用の孔を6箇所あける〔図5〕。二像において型持ちの位置は異なるものもあるが、それぞれ、像の量の中心にバランスよく配されており、場当たり的な配置ではない。なお、今回は型持を置かず、孔に外型を詰め込んだ。鋳造後この孔は内にバリを造るが、中型まで貫通しており、鋳型を固定する役割を果たした。しかし、肉厚のN163では、孔に土を詰めて中型を固定するより、やはり型持ちを置く方が自然であるかもしれない。因に孔蓋を蝋に直接差し込む場合、ブロンズの厚みが大きい二像では鋳造後抜けなくなる可能性がある。また、統一新羅の作例に見られるような背面の巾置は、銅の厚みが薄い作例や、開口部が大きいものに向いているだろう。巾置と型持は中型を固定する構造として共通しているが、異なる発想の技術である。湯口とガス抜け用のあがりは、巾置を削って溝を造り蝋で埋める。制作(鋳型)鋳型(外型)〔図6〕は、肌土、玉土、荒土の順に型土を付ける。腰佩と台座は、隙間が小さく型土をこめ難い。鋳型は、鉄棒、なまし番線(8番線、10番線)を内部に入れて補強している。鋳型は電気窯にて17時間焼成(最高設定温度は800℃・3時間焼成)した。鋳型の焼成結果は良好で、大きなひび割れは無い。なお、中型の木芯は完全に焼失することができた。型は冷めた後、なまし番線(12番線)で周囲を占め、全体の4分の3から3分の2程度を土間に埋める。また、頭部と台座は反転させ、顔面をやや下方に向けて埋設す― 135 ―― 135 ―
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