る〔図7〕(注10)。制作(鋳造)溶解はガス炉で、鋳造時の温度は1149℃~1217℃である〔図8〕(注11)。鋳型の割り出しは鋳造後、一晩冷却を待つ。中型の除去には平鑿を使用し、内部の鋳肌には平鑿で突いた痕が残った。内部は台座内部まで中型を除去した。型土を一通り観察した後、割り出しのために像の水洗いを行なった。台座内部の側面は工具を入れづらく、表面の土の完全な除去には至らない。重量は台座内の中型を除いておよそ24kgである。一部、鋳型制作の技量不足による形の崩れ、バリがみられるが、形状の再現性は良い。右手の人差し指、中指を鋳損じる。指の付け根で土を噛んでいることから、ゴミによる鋳損じである。また、指先が接続するはずの面部右頬にも突起が見られ、湯が流れようとしたことがわかり、ガス抜けの不具合も生じたとも思われる。頭頂部から顔面部にかけて、鋳皺が生じた。又、顔面部の鼻左には小穴が見られる。これは、ガスによる穴の一部が外部へ開口したものと思われる。全体に細かい玉金と鋳型土を噛んだ肌荒れが見られる。頭飾正面の上端模様はをゴミないしガスで欠損する。左手指、框左方の上面角にもゴミによる鬆が見られる。背面右方、反花と框の接続部分にはヒケによる穴が連続し、比較的小さい丸い窪みが痘痕状に生じる部分もある。像内は離型材を使用しないため、中型土の土粒がブロンズに食いついている。内部表面の転写は悪く、中型制作で生じた薄いヘラの擦痕は転写されていない。湯口近くの反花内部では、大きな窪みが生じた。窪みの中では不規則なヒビ割れが生じる。台座内部、地付きの形状は全体的に甘くなったが、中型制作時の形状の精度が原因である〔図9〕。鋳型は全体的に赤褐色で、中型の内部は灰褐色である。色の差は内部と外部で焼成温度に差が出来たためと思われる。型土には混ぜた藁などの繊維の灰を僅かではあるが確認する。肌土はブロンズに焼き付いており、一部はがれた箇所には黒色の炭化物が確認できた。ブロンズの鋳造欠陥は、複合的な条件によるため判断しづらい。全くの同条件での試作は出来ないため、多くのデータを収集する必要がある。― 136 ―― 136 ―
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