注⑴岩佐光晴「作品解説 23 菩薩半跏像(法163号)」、『法隆寺献納宝物 金銅仏Ⅰ』、東京国立る。また、鉄芯部材の転用を行なったとすれば、完成した像の模刻・改変もありうるが、これについては推測の域を出ない。作例ごとに差はあるものの、金銅半跏思惟像は片足を踏み下げて坐し、像と台座を一鋳する。また、像の内部は大まかに分けると、無垢、台座を中空とするもの、台座から体内部以下を中空とするもの、頭部までを中空とする作例がある。この中空の状態については、似た大きさの像でも内部を無垢にするものもあり工房の差による。献納宝物中の半跏思惟像のほとんどが台座のみを中空とするが、頭部まで中空でつくるには、体部が細く、上体と台座の中心軸が前後するため難しい。頭部までを中空にする二像の構造は特徴的で、洗練された制作技術と言えるだろう。像の原型制作において、工人の力量のみでは、銅の厚みや中型の形までを模すことは難しく、制作当初からの緻密な設計が窺える。これらを考慮し、N163のやや歪んだ八角框は、像全体の印象を変える意図的な改変であろう。框の形状によって生じる像の印象の差と、姿勢が対称ではないことから、一具とは考え難い。引きつづき今回の再現実験、調査で得られた知見と仮説を更新しつつ、半跏思惟像と古代金銅仏の制作について追跡していきたい。博物館、1996年、446頁。⑵「作品調書 22 菩薩半跏像(法163号)」、注⑴同書、512頁(初出は『法隆寺献納宝物特別調査外報Ⅶ 金銅仏3』、東京国立博物館、1987年)。⑶戸津圭之助「真土(まね)式蝋型法による小型金銅仏の試作実験」注⑴同書、379-381頁、浅井和春「作品解説 1 如来及び両脇侍像(法143)」注⑴同書、436-437頁。⑷注⑶戸津圭之助論文、380頁、386頁。⑸朝鮮半島の金銅仏の制作については、郭東錫『三国時代の金銅仏の復元的研究』、早稲田大学博士論文、2015年(同論文の主要部分は『』、⑹郭東錫は、一光三尊像を構造ごとに分類し、その制作方法について解説する。注⑸郭東錫論文、93頁。⑺注⑵「調書」、510~512頁。⑻平尾良光「法隆寺献納宝物 金銅仏の蛍光X線分析法による材質の調査」『法隆寺献納宝物特別調査外報Ⅹ 金銅仏6』東京国立博物館、1990年、71頁、73-74頁。⑼成分は、試料A(あがりの像底に近い部分):銅95.49%、錫4.33%、アルミ0.08%、鉄0.04%、塩素0.04%、硫黄0.03%である。試料B(台座背面より採取したバリ):銅51.17%、ケイ素37.75%、アルミ5.71%、錫2.39%、鉄1.31%、ナトリウム0.60%、カリウム0.58%、マグネシウム0.42%、チタン0.16%、マンガン0.15%、カルシウム0.13%、硫黄0.03%。(分析はアグネ技術、2016年2月として出版)に詳しい。― 138 ―― 138 ―1:
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