Aグループは、大楽寺本と同じくほぼ正方形の画面構成をもち、会衆や動物などがほぼ過不足なく継承されるもので、洞昌寺本が該当する。Bグループは、やや縦長の画面となり、動物の数が増えているもので、海北友倩筆の萬弘寺本と、海北道利筆の円福寺本が該当する。萬弘寺本・円福寺本ともに他の模本と比べやや小型の画面である。Cグループは、縦長の画面にさらに多くの動物を描き込み、上空に湧き出る雲を多く描くもの。こちらは、海北友倩筆の地蔵院本、大雄寺本、浄安寺本、海北道利筆の円通寺本、長興寺本、および紀儀実斉筆の任聖寺本が含まれる。(3)模本それぞれの特徴― 20 ―― 20 ―宇佐市中津市豊後高田市大雄寺本 絹本着色 縦172.8cm 横131.3cm 江戸時代前期 浄安寺本 紙本着色 縦198.0cm 横175.0cm 江戸時代前期 海北道利筆円通寺本 紙本着色 縦184.9cm 横134.3cm 元禄14年(1701) 宇佐市長興寺本 紙本着色 縦174.0cm 横135.0cm 享保8年(1723) 宇佐市円福寺本 紙本着色 縦149.2cm 横119.0cm 江戸時代前期 紀儀実斉筆任聖寺本 紙本着色 縦169.5cm 横130.7cm 享保11年(1726) 宇佐市萬弘寺本、地蔵院本、洞昌寺本、大雄寺本、円通寺本、長興寺本、円福寺本(注8)、任聖寺本が、先行研究でも度々指摘されてきた模本である。また、中津市浄安寺にも海北友倩筆の模本が伝来することが調査により明らかとなった。これらの模本について、図様の特徴から次の3グループに分類し、それぞれの特徴を明らかにしたい。A 洞昌寺本B 萬弘寺本・円福寺本C 地蔵院本・大雄寺本・浄安寺本・円通寺本・長興寺本・任聖寺本グループ毎に特色を見ていくと、Aグループ洞昌寺本〔図2〕は、原本である大楽寺本と法量に差がほとんど見られない(注9)。細部に目を向けると、会衆や釈迦の着衣の文様、彩色に少々異なる点が見られ、動物も洞昌寺本に鳥が一羽描き足されるが、基本的な構成は一致する。制作年代を記す銘文は見られないが、海北友倩作のうち、制作年代が明らかなものは貞享元年(1684)から3年(1686)にわたり制作され
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