け、靴を履く。冠を頂き、牀座に右膝を立てて坐している。頭部を左に向けて開口する。左手は腹前で料紙を、右手は外側に広げて筆を持つ。右脇には筆立てと硯のような器物を置く。司命は座具に獣の皮を掛け、左脚を上げ、右脚を下して坐す。左手に札をもち、右手は小指を立てて筆を持つ。官人姿で幞頭を被り、円領の上着と袴を着し、脚にはブーツを履く。司録も司命と同様に官人姿で獣の皮を掛けた座具に腰を懸ける。体を左斜め後方に向け、両手で顔前に巻紙を広げ、開口して五道大臣に向かって読み上げる姿である。荼吉尼は童子形で頭髪は束ねず背に垂らす。左手は胸の高さで袋を持ち、右手は掌を正面に向けて拳を握る。右脚を立てて氍毹座に坐し、頭部は少し右に向ける。上裸で裳を穿き、装身具は腕釧のみである。遮文荼は猪頭で逆立った頭髪である。頭部を左へ向け、荷葉座に坐す。左手は拳印で腰に当て、右手は屈臂し、肩の高さで器を掌に載せる。条帛、裳、腰布を纏い、頭飾、胸飾、臂釧、腕釧の装身具を着ける。成就仙は荼吉尼と同様に垂髪の童子形で、頭部を左に向けて、左を前に氍毹座に坐す。左手は腰に按じ、右手で獣皮の袋を提げる。上裸に腹帯を着け、裳を穿く。装身具は腕釧のみ。聖天は象頭で右に向き、口を開いて歯を見せる。左手に戟、右手に蘿蔔を執る。右脚を上にして荷葉座に坐す。条帛、裳、腰布を着け、胸飾、腕釧、臂釧で装身する。以上、『別尊雑記』本の各尊の図像を確認した。主尊・焔魔天は現図系曼荼羅と一致する図像で、この図像が小野醍醐を中心に東密において強い規範性をもって相伝されてきたことはすでに確認した通りである。しかしその他の眷属については、現図に表される図像や表現と距離があるように思われる〔表1〕。そこで、『別尊雑記』本の各尊を像容によって分類すれば、聖天と、3つに分類できよう。このうち「② 現図とは別系統の胎蔵界曼荼羅に類例が見出せるもの」に注目して、ここで取り上げたい。① 現図系胎蔵界曼荼羅に依拠するもの―焔魔天② 現図とは別系統の胎蔵界曼荼羅に類例が見出せるもの―荼吉尼、遮文荼、成就仙、③ ①、②以外―后、妃、太山府君、五道大神、司命、司禄― 343 ―― 343 ―
元のページ ../index.html#353