鹿島美術研究 年報第35号別冊(2018)
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― 416 ―・Bénédicte Jarrasse(Université de Strasbourg):「舞踊芸術の伝承の商業化について:諸芸術の交錯するジャン=オーギュスト・バーの肖像立像(De la commercialisation à la mise en légende de lʼart chorégraphique: lesstatuettes-portraits de Jean-Auguste Barre au croisement des arts)」・Julia Bührle(Oxford, New College):「バレエ・ダクシオンからバレエ・ロマンティックまでの舞踊と文学:シェイクスピアのバレエ(Danse et littérature du ballet dʼaction au ballet romantique: les balletsshakespeariens)」・Arianna Fabriccatore(Université Paris-Sorbonne):「諸芸術に向き合う舞踊:18世紀の美的システム、モデル、パラダイム(La danseface aux autres arts: systems, modèles et paradigmes esthétiques(XVIIIe siècle))」・Delphine Vernozy(Université Paris-Sorbonne):「20世紀初頭の〈純粋舞踊〉に関する論争(Le débat sur la ʻdanse pureʼ au début duXXe siècle)」ランシエールは以上の鑑賞者の制作者に対する従属的な地位からの解放を、教師と生徒のヒエラルキーを否定する教育哲学を応用して、理論化した。この教育理論をランシエールは、ジョセフ・ジョコト(Joseph Jacotot、1770-1840)という18世紀から19世紀にかけて活躍した哲学者の理論研究から着想した。つまり、ランシエールは、近代の始まりである18世紀に遡り(事実ランシエールはジャコトの活躍は19世紀だったとしても前世紀の人物である明言している)、近代の起源において表された哲学を再考することで、今日的な芸術状況の問題を解明する理論を確立した。以上のランシエールを巡る今日的な研究動向の中に本研究集会を位置づけることができる。本研究集会はフランス17-18世紀の芸術研究を専門とするオーガナイザーによって組織され、多くの発表者がフランス18世紀舞踊理論を問題とし、ジャンル間交渉及び芸術と社会との関わりという視点から自律性へと向かうモダニズム理論を問い直した。ただし、こうした視点が可能であるのは、昨今イギリス・フランスにおけるフランス古典主義舞踊理論研究が飛躍的に展開したからであるということも付け加えたい。例えば、『百科全書』の音楽及び舞踊関係項目の主な執筆者であるカユザックの舞踊論の批評校訂版が2004年に出版され、18世紀の最も重要な舞踊理論であるノヴェールによる舞踊理論の18世紀に公刊された英訳の批評校訂版が2014年に出版された。こうした基礎研究の整備に基づいて、フランスに加え、イギリス・オクスフォー

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