「fabula」内の電子ジャーナル「Colloques en ligne」にて公開される予定である。② 第11回SGRAチャイナ・フォーラム「東アジアからみた中国美術史学」ド大学において毎年4月に開かれる18世紀舞踊に関する国際会議「オクスフォード・ダンス・シンポジウム」などを中心として、17-18世紀フランス舞踊古典理論に関する研究が今日急速に進められている。従って、本国際会議は、興隆するフランス古典主義舞踊理論研究という視点から、美学美術史分野の最新の課題である芸術のモダニズム概念を問い直し、これら2つの点において今日的意義を持つ稀有な研究会であったと考えられる。報告者は以上の芸術領域の動向、舞踊ジャンルの動向を踏まえて、西洋近代における最初期の鑑賞者論とみなすことができるJ.-L.カユザック(J.-L.Cahusac、1706-1759)による芸術理論についての発表を行った。ランシエールの鑑賞者概念と同様に、カユザックの理論で論じられる観客の眼差しも、受動的な存在ではない。カユザックによれば、ある芸術表現が真に独創的なものとなるためには、それをみる鑑賞者によってそれは独創的であると判断される必要がある。この判断を行う能動性をカユザックは鑑賞者の視線に求めた。以上の研究成果は、それまで専ら詩学(政策学・ポイエーシス)を意味した芸術理論が、鑑賞者の受容や鑑賞論へと推移する重要な転換点の解明に寄与することができたと考える。尚、本研究集会の成果は掲載が認められれば、フランスの人文学研究のwebサイト期 間:2017年11月24日~26日(3日間)会 場:中華人民共和国、北京師範大学報 告 者:東京大学 東洋文化研究所 准教授 塚 本 麿 充(代表者)2017年11月25日、北京師範大学において第11回SGRAチャイナ・フォーラム「東アジアからみた中国美術史学」が開催された。共催の北京師範大学や清華東亜文化講座の告知や広報の成果もあって、当日は会場を埋め尽くすほどの総勢70名以上の聴衆が参集し、本テーマへの関心の高さがうかがえた。2014年から行ってきた清華東亜文化講座との共催による本フォーラムは、広域的な視点から東アジア文化史再構築の可能性を探ることをテーマの主眼に据えている。過去3回のフォーラムでは、近代に成立した国民国家のナショナリズムの言説に取り込まれ、東アジア各国において分断された一国文化史観からいまだ脱却しきれない― 417 ―
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