鹿島美術研究 年報第35号別冊(2018)
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「14世紀ドイツ法書(ザクセンシュピーゲル)に描かれた女性とマイノリティ」① 国際学士院連合第89回総会及びキャヴィネス名誉教授による美術史講演会⑶会議開催域にとっては複雑な政治的な制約を、自らの生活環境の場に呼び起こす原因にもなりえる。しかしながら、このような自らの立脚地の危うさの上に建っているからこそ、東アジアにおける他者研究は、非常に大きな魅力を持っているとも言えるであろう。今回の限られた時間においては、その初歩的な交流をなし得ただけで、さらに深い学術交流については今後の課題となっているが、もしもこれから日本に留学する多くの中国人留学生が存在しうるとしたならば、その方たちはかつてのような日本でも中国研究をするのではなく、日本研究を行うことを主流としていくかもしれない。日本の中国学研究の最大の読者は、もしかしたら中国の中国研究者ではなく、中国の日本研究者なのかもしれないし、中国の日本研究者の最も熱心な読者は、日本の中国研究者となるかもしれない。そのような将来的なクロッシングする眼差しについても大きな展望を得ることができた、大変に有意義なフォーラムとなり、今後も有意義な交流を続けていきたいと願っている。期   間:2017年10月21日~26日(6日間)主 催 者:国際学士院連合会   場:東京、日本学士院報 告 者:日本学士院 会員  武 田 恒 夫1.はじめに2017年10月21日(土)から26日(木)まで、日本学士院を会場として、国際学士院連合第89回総会が開催された。国際学士院連合は、人文社会科学分野のアカデミー等により構成され1919年に創設された国際組織で、長期的で重要なプロジェクトをサポートし、基礎的な文献を出版することを目的としている。今回は39カ国55名の代表が参加された。以下、美術史に関連が深い行事について、経過を報告する。なお、第2節は秋山聰東京大学大学院人文社会系研究科教授、第3節は佐藤彰一日本学士院会員・名古屋大学名誉教授が執筆した。― 421 ―

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