鹿島美術研究 年報第35号別冊(2018)
435/455

終日の25日に挙手により決定されたが、2件の新事業の中の1件が美術史関係のそれであり、これについても取り上げることにする。≪23日≫最初に23日午後に行われた6年次評価には、総数で24件の事業が評価の対象にされているが、美術史関係の事業は、第35事業「ユダヤ美術インデクスIndex of Jewish Art」と、第40A事業「ビザンティン記念壁画総覧Corpus de la peinture monumentale byzantine」の2件である。前者は1979年に開始され、特に年限が区切られていないオープン・プロジェクトに指定されている。エルサレムのヘブライ大学所在の「ユダヤ美術センター」が基幹組織となり、41カ国におよぶ約700の美術館、図書館、プライベート・コレクション、シナゴーグなどに収容されている視覚芸術作品のインデクスを作成するのが目的である。現在まで17巻が出版され、今後2巻の出版が予定されている。主査M.H.キャヴィネス教授の評価は、進捗状態は順調であり、ポジティヴと評価された。後者は対象にモザイクを含んだ1984年に開始され、おおよそ750年から1500年を時間幅として設定されたギリシアとイタリアの共同事業である。これにスウェーデンの「人文社会科学研究協議会」が支援を行なっている。現在まで7巻が出版され、今後ギリシア関連が30巻、イタリア関連が17巻の出版が予定されていたが、最新の情報では、ギリシアとイタリアだけで、さらに45巻を必要とするとされている。2名の匿名エキスパートの評価は、事業目的と進捗状態いずれも「エクセレント」と評価され、主査M.H.キャヴィネス教授の評価も同様であるが、内容に鑑みて事業タイトルに「ギリシアとイタリアの…」と限定詞を付すべきであるとしている。≪24日≫2年次評価の対象となった美術史関連のプロジェクトは2事業、すなわち第16事業「中世ステンドグラス総覧Corpus Vitrearum Medii Aevi」と第73事業「ルートヴィヒ・ブルハルトによるルーベンス作品総覧Corpus Rubenianum Ludwig Burchard」である。第16事業は当初オーストリア科学アカデミーの企画として出発したが、やがて「モニュメント保存連絡事務所」がリエゾン・オフィサーとなり、ベルギー、カナダ、ドイツ、英国、ポーランド、ポルトガル、オランダ、スペイン、スイス、米国など10カ国を加えた計11カ国のアカデミーが結集した大プロジェクトとなった。基幹アカデミーはオーストリア科学アカデミーである。参加各国がその推進に鎬を削っており、刊行成果は顕著なものがある。米国の委員会は自国の博物館・美術館が所蔵するステンドグラス作品のカタログ作りが主要な活動である。主査A・イヴァンチク教授の評― 424 ―

元のページ  ../index.html#435

このブックを見る