鹿島美術研究 年報第35号別冊(2018)
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⑴ 外国人研究者招致① ピカソ芸術の研究2.2016年度助成期   間:2017年11月8日~16日(9日間)招致研究者:フランス共和国、フランス国文化財 主任学芸員報 告 者:京都工芸繊維大学 准教授  永 井 隆 則2017年は西洋近代美術史において、ルネサンス以来の造形革命である《アヴィニョンの娘たち》の制作から110年、戦争と暴力の20世紀を象徴する《ゲルニカ》の完成から80年を迎えることになり、ピカソだけでなく、20世紀という時代と芸術にとっても記念すべき節目の年であった。一方パブロ・ルイス・ピカソについては、その死の1973年から半世紀近くになっても、各種多彩な企画の展覧会開催や研究書の刊行が相次いでおり、ピカソという芸術家の意義と再評価は、肯定か否定かを問わず、今日的な問題であり続けている。また、この記念すべき2017年に、ポーラ美術館で「ピカソとシャガール展」(3/18~9/24)、和泉市久保惣記念美術館で「ピカソと日本美術」展(10/15~12/3)が開催されるという事で、この機会に、日仏美術学会関西支部で、ピカソに関する事業を開催できないかと考え、ピカソ研究の第一人者でいらっしゃる大髙保二郎先生(早稲田大学名誉教授)に企画協力をお願いし、我が国でピカソ芸術の意味と意義を再考するために、ピカソ研究の第一人者であるロランス・マドリーヌ(Laurence Madeline)女史をフランス共和国から招聘して、京都工芸繊維大学で国際シンポジウム「ピカソと人類の美術」、東京の上智大学で、学術講演会「ピカソ再考」を実施した。1)国際シンポジウム「ピカソと人類の美術」ピカソは80年以上にもおよぶその全画業において、カメレオンのごとく、目まぐるしいスタイルの変貌を繰り返してきた。ピカソは、彼自身がおかれた時代や環境につねに敏感に反応し、その折々で必要不可欠とされる独自のスタイルを生み出してきた。そうしたピカソ芸術(絵画に限らず、版画類や彫刻、陶芸、舞台装飾なども含めロランス・マドリーヌ(Laurence Madeline)― 430 ―

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