② 1900年パリの版画芸術─トゥールーズ=ロートレック:エリートからストリートまで【講演内容】的役割も果たせたと確信する。期 間:2017年10月10日~19日(10日間)招致研究者:オランダ王国、ファン・ゴッホ美術館 版画素描部門 学芸員フルール・ルース・デ・カルヴァーリョ(Fleur Roos Rosa de Carvalho)報 告 者:三菱一号館美術館 館長 高 橋 明 也本助成による招致研究者であるフルール・ルース・ローサ・ド・カルヴァジョ氏は、2017年10月18日に、東京・丸の内の会場エムプラス(東京都千代田区丸の内2-5-2 三菱ビル)にて、「Prints in Paris 1900. Henri de Toulouse-Lautrec: from elite to the street(1900年パリの版画芸術─トゥールーズ=ロートレック:エリートからストリートまで)」と題して講演会を行いました。講演会には、83名の聴講者が集まり、講演終了後は活発な質疑応答がなされました。カルヴァルジョ氏は、アムステルダムのゴッホ美術館の版画・素描部門の学芸員として研究活動に従事されると同時に、2015年には来場者と双方向のWebサイトを立ち上げる試みもしています。本講演会はそうした成果を発表することを通じて、さらなる研究の広がりや深化の契機とも成り得る貴重な機会であったと考えます。以下にカルヴァルジョ氏の講演の内容を要約し、ご報告致します。フランス19世紀の芸術を皆さまと共有できる機会をありがたく思います。私たちはロートレックという名前から、パリの夜、享楽の場、ムーラン・ルージュの指定席にいる小柄な男性、創作意欲をかきたてる歌手や踊り子の様子をすぐに思い浮かべます。特にロートレックのお気に入りだった歌手はイヴェット・ギルベールです。長い黒手袋を付けた腕、がりがりで青ざめた表情、強烈なオレンジ色の髪、語りかけるように歌う演奏のあり方、彼女のすべてが刺激的であり、ロートレックは手法を駆使して彼女を描いています。オリーブグリーンの色調、ダイナミックで躍動感にあふれたしぐさ、アートプリントと呼ばれる限定的な版画では鉛筆デッサンのように細い筆致で描線を再現しています。ポスターでは顔がなくとも上背のあるシルエットと黒手袋で― 436 ―
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