四隅を二重の五弁花に囲まれており、カルトゥーシュは、上下を1匹の動物を含む尖頭アーチ形の枠に囲まれている。他方で、その区切り線の下部においては、ナスタアリーク体によるペルシア語詩銘文を囲うカルトゥーシュ〔図4-a、b、c、d〕と、1匹の動物を内包する横向きの紡錘形の枠〔図5-a、b、c、d〕とが、区切り線の上部と同様、それぞれ4パターンずつ時計回りに交互に並べられている(注2)。すべての枠の内側には、螺旋状の植物文様とその間を充填する斜線が施されており、上述の動物像およびペルシア語詩銘文の背景と化している。ペルシア語詩銘文は、区切り線の上部と下部において、それぞれ以下のような内容を有している。区切り線上部:mīmīram agar nazdikash nimīram 〔図3-a〕mīsūzam agar ba-gard-i ū mīgardam 〔図3-b〕shamī ki sūkht jān-i gham-parvardam 〔図3-c〕tā guft ki parvānah-yi khīshat gardam 〔図3-d〕彼の側に行けないとわたしは死んでしまう彼の周りを回るとわたしは燃えてしまう蝋燭 sham、それは、わたしの、苦しみを募らせた魂を燃やすもの 「我はそなた自身の蛾 parvānahになったのだ」とそれ(=わたしの、苦しみを募らせた魂)が言う程に区切り線下部:ここで銘文として選択されているのは、ペルシア語神秘主義詩の主要なモチーフの一つである「蛾と蝋燭」の寓意を主題とした詩である。「蛾と蝋燭」の寓意とは、地上の人間が唯一絶対の神との合一を渇望し修行する態度を、蛾が蝋燭の炎に魅かれそこsham archih chū man dāgh-i judāī dārad 〔図4-a〕bā giryah va sūz āshināī dārad 〔図4-b〕sar rishtah-yi sham bih az rishtah-yi man 〔図4-c〕kān rishtah sarī ba-rushanāī dārad 〔図4-d〕たとえ蝋燭もわたしのように別離の痛みを持ち泪と焔を知っているといえども蝋燭の糸の先はわたしの頭よりもましなぜならその緒は光へと導かれているから― 13 ―― 13 ―
元のページ ../index.html#25