〈保存状態〉亡失：頂上仏面の頭部、頭上面3面（背面に1面あった場合は4面）。瓔珞の遊離部。後補： 右耳の耳輪および耳朶。右手第1・2指、第4・5指先（注7）。左腕の肘から手首（注8）。髻後方の頂上付近から地髪部、垂髪の大部分、腰の括れにかけて。背面裙折返しのやや下方から裙裾にかけて。背面条帛の遊離部。両足先および角枘（注9）。〈胸飾と臂釧の意匠（注10）〉条、少し間隔を空けて紐二条・列弁文からなる。基本帯には、3つの菊座をおく（中央：中心に小孔を穿つ、左：中央部分を一段低くあらわす、右：中央部分に別材の埋木を嵌める）。基本帯の下には、現在不明瞭ながら大振りの唐草飾りがあり、中央の唐草から左右へとのびる副帯、副帯より下がる垂飾から構成される。瓔珞： 体側の裙折返し部の下より連珠（中心に小孔を穿つ）が続き、膝下あたりでドーナツ状の大きな粒（中心に小孔を穿つ）を交える。大きな粒の間は連珠二個でつなぐ。また、大腿部と膝をわたる天衣と脛あたりに瓔珞の痕跡がみられる。なお、左腕で隠れる位置の瓔珞は省略されている。臂釧： 列弁文・紐一条・連珠・紐一条・矢羽文・紐一条・連珠・紐一条・列弁文からなる。外側に木瓜形の飾りをつけ、飾りの下よりリボンを垂らす。左方分の木瓜形飾りの中央には大きな孔があるが、右方分では孔は作らない。頭上面は、8番と9番に枘挿しの痕跡を残すが、その他は本体と共木から彫出する。現状、右腕は手首以下、左腕は肘と手首とで矧ぐ。両足先は別材製。背面は髻の頂上付近から地髪部、垂髪の大部分、腰の括れにかけて不整形の矧ぎ目があり、裙折返しの下方から裾にかけて5つのパーツからなる長方形の矧ぎ目がある。また、裙折返し部、大腿部をわたる天衣、脛に銅釘がほぼ左右対称の位置に残っており、瓔珞の遊離部を取り付けていた痕跡と思われる。現在は、像底中央に挿入された角枘によって台座上に固定されている。薬師寺像の図像に関する検討薬師寺像の概要を確認したうえで、次に図像の検討を行う。玉繋帯と基本帯の形式は、8世紀前半からみられるものである。それに対して、唐草、副帯、垂飾は、8世紀後半に檀像の将来によってもたらされた新しい形式である。薬師寺像のように、8世紀前半の伝統的な胸飾形式を残しながら新形式を積極的に取― 258 ―― 258 ―
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