い画家たち」の室内画に近代絵画の萌芽を認めている。彼らは、モティーフを物語的意味内容から分離し、光や質感、幾何学的なフォルムと有機的なフォルムのバランス、陰影、空間の広がり、そして描かれる場所に特有の情調といった、可視的現象の絵画的効果を追求する「現代の典型的な姿勢」の実践者として捉えられている。こうした室内画において、人物像と家具調度に意味的な差異はない。モンラズは、ハマスホイが描く女性が読んでいる手紙には、いかなる象徴的な意味も込められていない(注12)と述べているが〔図7〕、ホルスーウやイルステズら「若い画家たち」の作品についても同様のことが言えるだろう〔図3、8〕。風俗画の範疇に留まっていた19世紀末の室内画は、1900年頃、写実的な表現の衣を纏った近代絵画へと変化を遂げた。③親密さとしてのノスタルジー1908年10月19日付けのPolitiken紙に掲載されたホルスーウの展覧会レビューには、画家の芸術の特徴が的確に述べられている。「ホルスーウは、室内の芸術をこの上なく美しい、我々に特有のものへと高めたデンマーク人芸術家たちの筆頭である。・・・これらの絵画のモティーフはそのほとんどすべてが、さまざまに配置によって異なる光で照らされた上質な家具が設えられた、彼の古くて美しい居間からとられたものであり、どれもが美しく絵画的な効果と好ましい色調による穏やかな調和を生み出している。ホルスーウの芸術は、精神を落ち着かせてくれる。それは目を喜ばせ、人が生まれながらに持っている、親密さ(hygge)と幸福の感覚を愛撫する。光と太陽の静かな戯れ、薄明かりと影のゆらめきが、命あるものすべてを支配しているかのようなこれらの室内は、人々にことのほか快適な家にいるかのように感じさせる。」(注13)上質な家具、時間の蓄積を感じさせる美しい空間、穏やかな光、調和した色彩といった諸要素は、ハマスホイやホルスーウ、イルステズらの作品に共通するモティーフ、表現である。同時代の人々にとって、こうした彼らの室内画はしばしば過去と結びついたイメージとして捉えられていた。1906年の展覧会レビューにはハマスホイの作品について以下のような記述が見られる。「ヴィルヘルム・ハマスホイの絵はつねに静けさをまとう。派手な色彩などどこにもなく、多くの場合、一人の人物が静かに佇んでいる。過ぎ去りし日々を語る― 460 ―― 460 ―
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