鹿島美術研究 年報第36号別冊(2019)
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注⑴ Madsen, Karl, “Nogle Udstillingsindtryk”, Tilskueren, 6. aarg., 1889, pp. 417f..⑵ Hornung, Peter Michael & Monrad, Kasper, Dengang i 80erne. Danske miljøer i malerkunsten 1880-⑹ Madsen, op. cit., p. 418.⑶ 萬屋健司、「ヴィルヘルム・ハマスホイの室内画の形成と展開─17世紀オランダ風俗画の影響⑷ (Hedberg, Tor), “ʻHjemmets Malereʼ. Dansk Kunst bedømt i Sverig, Politiken, 2. august, 1897.⑸ Thiis, Jens, “Udstillingerne. Interiør. -De Unge paa Charlottenborg. -Et Blik paa anden Ophængning. VIII.”, Politiken, 14. maj, 1908.現代社会の避難所としての室内空間と、古き良きデンマークへのノスタルジーが融合したハマスホイやホルスーウの室内画は、家族の幸福な日常とは異なる種類の、しかしなお親密なイメージとして同時代の人々の目に映っていた。むすび本研究では、同時代の文字資料のうち、主として新聞や雑誌といった、いわば大衆的な媒体に綴られたテキストをもとに、19世紀末のコペンハーゲンにおける室内画の表象について、その輪郭を素描した。近年のハマスホイ研究では、画家の芸術を近代美術史の国際的な枠組みの中で捉えようとするものが多く、とりわけ象徴主義的な考察が主流となっている。ハマスホイの作品を、「孤独」や「不安」、「コミュニケーション不全」、「疎外感」といった象徴主義のよく知られたテーマに沿って解釈することは可能だろう。しかし、ハマスホイと、そうした象徴主義者との直接的な関係を示す資料は、現在までのところほとんど知られていない。少なくとも同時代の人々にとって、ハマスホイの作品は、コペンハーゲンで描かれていた多くの室内画と同じように、そしておそらくその中でもっとも、郷愁を帯びた親密さを感じさせるものだったのではないだろうか。「(ハマスホイ、イルステズ、ホルスーウの)三人は、デンマーク人に特有のある一面を捉えている。それは少ない色数の上品に調和した色彩、白または薄い金めっきの額縁に収められた控えめな印象を与える絵画、マホガニーあるいは樺製の古い家具などによって、室内に親密さ(hygge)を創出したいという願望である。」(“De graa Toners Maler”, Jyllands Posten, 9. marts, 1914.)― 462 ―― 462 ―1890, exh. cat., Kunstforeningen, København, 1983, p. 15.に関する試論─」、 『フィロカリア』、 25号、2008、pp. 99-139。

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