鹿島美術研究 年報第36号別冊(2019)
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注⑴ フォルチュニは回転するシリンダーを用いて絹ベルベットや綿に染料を染め付ける技術を開発※ 本稿を執筆するにあたり、フォルチュニ美術館(ヴェネツィア)の収蔵品に関して、同館のクリスティーナ・ダ・ロイト(Cristina Da Roit)学芸員よりご協力を、また染め型紙について、型染めの重要無形文化財保持者の小宮康正氏にご教示を賜りました。記して感謝します。⑵ 1967年12月12日より翌年の1968年2月4日まで開催された。図録が発行されている。A Remembrance of Mariano Fortuny, 1871-1949, Los Angeles County Museum of Art, Los Angeles, 1967⑶ 1975年の開館後、21世紀までに行われた主たる展覧会は1978年、1983年、1987年、1999年のみ⑷ Anne-Marie Deschodt, Mariano Fortuny: un magicien de Venise, Paris: Editions du Regard, 1979 (repr., Paris: Editions du Regard, 2000)⑸ Guillermo de Osma, Mariano Fortuny. His Life and Work, London: Aurum, 1980 (repr., London: V & A Publishing, 2015).⑹ 京都服飾文化研究財団が構成し、青山のスパイラルホールで開催された展覧会で、図録が発行されている。『布に魔術をかけたヴェニスの巨人─フォルチュニイ展』スパイラルホール、1985年。⑺ 日本人の母を持ち、日本で学生時代を過ごしたファッション・モデル、宝飾デザイナーのティナ・チャウ(Tina Chow, 1950-1992)は、フォルチュニの「デルフォス」やベルベットの外衣を蒐集し、日常的に身につけていた。1985年の「布に魔術をかけたヴェニスの巨人―フォルチュニイ展」にはチャウの蒐集品が多数出品されている。⑻ 国内でフォルチュニ作品を所蔵するのは、共立女子大学博物館、文化学園服飾博物館、杉野学園衣装博物館、東京家政大学、京都服飾文化研究財団、神戸ファション美術館、島根県立石見美術館の各組織である。⑼ 図録は下記の通り。『ポワレとフォルチュニィ─20世紀モードを変えた男たち』東京都庭園美術館、2009年。この展覧会に先立ち、神戸ファッション美術館と島根県立石見美術館で「ポワレとフォルチュニィ―コルセットをめぐる冒険」という名称で先行して展覧会が開催された。独自の図録も発行されている。⑽ 「マリアノ・フォルチュニ“ヴェネツィアの魔術師”:コレクター、芸術家、ファッションデザイナー(Mariano Fortuny – “The Magician of Venice” Collector. Artist. Couturier.)展は2016年の12都市であり水都であるヴェネツィアに居住し、制作した。こうした麗しい印象と、謎めいた印象を与える「ヴェネツィアの魔術師」という渾名を利用し、その上に、遥か彼方の日本の香りを付加した。こうしてファッションの最先端を行くことはなくとも、時代に沿った活動をし、大きな成功を収めた、ということではないだろうか。フォルチュニが実際に、日本をどのように評価していたかについては、更なる調査と考察が必要かと思われる。し、織りで作り出していた模様をプリントによって、簡易に得ることに成功した。である。― 480 ―― 480 ―

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