いる。ガードルは、両面に刺繍され、色が反転している。1935-36年に大英博物館で修復された。欠損部分はあるが、最高の材料を使用し、熟練した技術者により作られたものと確認できた。5.バチカン美術館(Vatican Museum)イタリア/ローマ〔表2〕参照バチカン美術館が所蔵する赤い絹のバチカンコープ(The Vatican Cope)は、新約聖書の場面が、イスラムタイルのような八角星フレームの中に3段でデザインされている。裾の部分は切り揃えられ、デザインを失っている。フレームやマントは金糸のアンダーサイド・カウチングで、絹糸により顔やローブはスプリット・ステッチで、マントの裏地はリスの毛皮のパターンが、ドレープの影は濃淡で表現され、その上に小さな煌めきの模様が縫われ、黒糸のステム・ステッチで輪郭が施されている。6. サン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂内 宝物展 (San Giovanni in Laterano/The Lateran Treasury Museum) イタリア/ローマ〔表2〕参照サン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂は、ローマの四大バシリカの一つで、宝物展には重要な典礼用調度品・聖遺物庫・タペストリー・祭壇カバーや法衣などが展示されている。法衣は17-19世紀にローマで制作されたものが中心で、赤や白、紫、緑などの絹生地に紋章やオークの葉など施され、パディング技法(Padding/土台布にフエルトなどで出来上がりよりも小さめに下地を作り、その上から刺繍を施す)で立体感を出し、装飾的である。ラテラン・コープ(The Lateran Cope)は退色した金色で、半円の裾に沿い、枝が絡み合う柱のゴシックアーチが3段に配置され、新約聖書の場面がデザインされている。裾の部分は切り揃えられ、デザインを失っているが、人物はスプリット・ステッチで緻密に刺繍され、背景は縦長の菱形パターンが金糸にてアンダーサイド・カウチングで縫いつくされ、煌びやかだったと推測される。7.司教区博物館(Museo Diocesano)イタリア/ピエンツァ〔表2〕参照司教区博物館は、シエナ派の絵画や16世紀のフランドル派のタペストリー、ピウス2世(Pope Pius II/ 1405-1464・第210代 ローマ教皇)のイタリア製の法衣なども所蔵・展示されている。ピエンツァ・コープ(The Pienza Cope)は、金色の背景に豊かな色彩で、半円の裾に沿い、枝が絡み合う柱のゴシックアーチが3段に配置され、新約聖書の場面が動植物と共にデザインされている。現存する「オーパス・アングリカ― 544 ―― 544 ―
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