鹿島美術研究 年報第36号別冊(2019)
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Modern City)フェルナンド・マルサー(Fernando Marzá)― 591 ―― 591 ―期   間:4月7日~4月17日(11日間)招致研究者: スペイン、カタルーニャ建築家協会歴史資料館 ディレクター、 カタルーニャ工科大学 建築学部 教授報 告 者:長崎県美術館 学芸専門監  野 中   明2019年4月10日、長崎県美術館において同館を皮切りに日本国内五都市の美術館を巡回する「奇蹟の芸術都市バルセロナ展」が開幕した。19世紀半ばからスペイン内戦勃発に至るまでの約80年間を対象とし、近代化するバルセロナの都市空間の変遷とそこで生み出された芸術文化の展開を総合的に辿ろうとする試みである。この展覧会は、海外のコミッショナーを立てずに、昭和女子大学教授・木下亮氏を監修者に迎え長崎県美術館が幹事館となりコンセプトの策定、出品候補作品の選定、出品交渉を行い構成されたものである。展覧会には美術資料の他、バルセロナ市の各資料アーカイヴの協力を得て都市計画や建築に関する日本初公開となる資料が多数出品されたが、その選定にあたっては招致研究者であるフェルナンド・マルサー氏に展覧会の学術協力者という立場から多くの助言をいただいた。マルサー氏はヨーロッパの近代建築史の専門家であるとともに、イルダフォンス・サルダー(Ildefons Cerdà/1815-76)によるバルセロナの都市拡張プラン誕生150年を記念して開催された展覧会「サルダー:近代性の150年(Cerdà: 150 anys de modernitat)」(2009)のキュレーションを手掛けるなどバルセロナの都市計画史の専門家でもある。報告者は、所属する長崎県美術館において展覧会開幕後の4月13日に招致研究者による講演会を開催した。展覧会場で実際に目にすることができる資料の紹介を交えながら、独自の芸術文化を育み、現在も世界中の多くの人々を魅了してやまないバルセロナの都市空間について、その歴史的な変遷および現状の課題も含め専門的な見地に基づく紹介・報告を得ることを目的としたこの講演会には、自治体の都市計画担当職員や建築業界関係者、大学教員をはじめ100名を超える聴講者が参加した。本招致事業は、長崎県はもとより歴史的文化遺産を観光資源として位置づけ活用することで生き残りを図ろうとする日本の各自治体や地域における都市計画、街づくりに対する有用な情報を提供するとともに、市民レベルにおいて公共空間への関心、問題意識を共② 近代都市バルセロナの形成と発展(Barcelona: Formation and Development of the

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