鹿島美術研究 年報第36号別冊(2019)
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・田中隆史(東京藝術大学非常勤講師)このシンポジウムは、フォルム・リミット展と関連し、フランス・パリ市内にあるパリ国立高等美術学校(Beaux-Arts de Paris)において開催された。また関連ワークショップとして、パリ市内のデュペレ応用美術学校において日本の陶芸を紹介し、文化の交流を図った。この作品展(2019年1月25日から2月25日まで開催)は、フランスの事務局代表であるジェシカ・ボベトラ氏が5年前に企画し、報告者の田中隆史は企画段階からこれに関わった。そして東京藝術大学陶芸研究室の豊福誠教授、三上亮准教授、山本直紀非常勤講師、通訳である花岡美緒氏とジャン・バティスト氏の協力を得て実現した。展覧会は2月25日を持って終了し、11,000名の方々の来場があり大盛況のもと閉幕した。1 シンポジウムの背景と目的フォルム・リミット展は、西欧において現代美術のみならず建築、デザインの分野の中で多くの陶素材が使われている現象を受け、なぜこれほどの領域で陶素材が使われているのかという疑問が出発点となっている。これを読み解く手がかりとして「色彩と抽象─彫刻における陶芸への回帰」と題してシンポジウムを開催し、日本と西欧の陶芸文化を比べ、現在においてどのような陶造形表現がなされ、それはどのような意味をもつのかを再定義していくことを目的とした。2 シンポジウムの概要2019年1月25日(金)、フランスのパリ市内ボザール国立高等美術学校においてフォルム・リミット展のシンポジウムを開催した。上記の目的をふまえ本講演では第一部に豊福誠氏が現代の芸術大学の陶芸教育について講演した。続いて田中隆史が日本の陶の歴史、それから作家自身の作品の趣旨を説明した。第二部では大江ゴティニ純子氏が「色」に重点を置き、現代美術における陶芸と日本陶芸の中で、その捉え方の違いを明らかにした。第二部の後半ではフレデリック・ボデ氏がフランスを代表する陶芸作家であるフィリップ・バルドに焦点をあて、その造形的手法を講演した。最後に展示作家であるエリーズ・ヴァンドゥワル氏が自身の作品について話した。第一部・豊福誠(東京藝術大学美術学部教授)「東京藝術大学における陶芸教育について、及び自身の作品について」― 598 ―― 598 ―

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