・フレデリック・ボデ(Frédéric Bodet、インデペンデント・キュレーター、・エリーズ・ヴァンドゥワル(Élise Vandewalle、現代美術家)「Lʼexpérience de la couleur(色彩の経験)」「Emprunter pour réinventer(再創作の為の模倣)」「日本近代陶芸の歴史、及び自身の作品シリーズ「空」について」第二部・大江ゴティニ純子(Sumiko Oé-Gottini、ギメ美術館顧問、ヴィラ九条山キュレーター、元パレ・ド・トーキョーキュレーター)「自身の作品《Tropaion (déposition)》について」3 シンポジウム内容第一部では豊福誠氏が東京藝術大学陶芸研究室の歴史及び教育方針を説明、歴代教授の作品と現在の学生作品を多くの写真を使い発表した。陶芸制作の全工程を作家個人が関わることは、現在当たり前とされているが、この制作方法は近代に発生した。そして、その造形手法を芸術教育において実践していることなどにも触れた。その後氏の展示作品である色絵技法を、その背景にあるアジアの技術的な伝播とともに説明し、伝統的な工芸技術が継承保存される日本の取り組みを講演した。第一部後半は田中が日本の陶芸の歴史を明治時代から現代までに絞り、その変遷を説明した。その中で特に注目を集めたのは、1980年代に当時多摩美術大学の教授であった中村錦平氏が提唱した「東京焼」の概念であった。中村氏は、都市生活における陶芸作家の制作上の背景を分析した。それは戦後経済成長にともない社会に宅配の仕組みが浸透し、電話で土や材料の注文ができ、焼成も電気によってコントロールできる、つまり都会のマンションでも陶芸がつくれることである。このような陶芸制作の状況を地方の窯元制度に対して東京地方でつくる焼き物であるから「東京焼」であると宣言した。さらに現在は全国どこの土でも手に入り、海外からネットで道具や電気窯の注文ができる。このように考えると東京焼の概念は地方にも広がっている。それは制作外の要因が関連し、陶表現の幅が広がる現象が起きているといえる。これは後の会合の中でフランスの友人や聴衆の話題となった。次に田中は、最新作である「空」の概念の説明をした〔図1〕。それは既製品の陶磁器(今回はフランスで日常的に使われるコーヒーカップを現地で調達)を粉砕し粒― 599 ―― 599 ―元シテ陶芸都市近現代コレクション長)
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