鹿島美術研究 年報第36号別冊(2019)
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注⑴Alfred Sensier, La vie et Lʼœuvre de J.-F. Millet, manuscrit publié par Paul Mantz, A. Quantin, Paris,1881, pp. 182-189; Étienne Moreau-Nélaton, Millet raconté par lui-même, Tome2, Laurens, Paris, 1921,pp. 47-53, p. 193, Fig. 137.⑹Albert Boime, Art in an Age of Civil Struggle 1848-1871, A social history of modern art; v.4, Thedʼhonneur offert par la compagnie a sa sainteté le pape Pie IX, Paris, 1858.録の中で、ミレー研究の権威ロバート・ハーバートは、その作品の宗教的な表現について「明確な宗教主題は自然主義的に描かれる一方で、自然主義的な主題は、間接的に宗教性を喚起させる装いを与えられている」と書いている(注25)。まさに本作は「自然主義的に」描かれた明確な宗教画である。その意味において、ミレー絵画の宗教性という問題に一つの例を提示する作品であるとともに、聖なるものに日常を想起させる外観を付与するという19世紀の宗教画の一作例としても注目すべきものと考えられる。⑶Carlo Bozzi, “Mouvement artistique à lʼÉtranger: Italie” LʼArt et les artistes, no.105, Dec 1913, pp. 148-“Lettres, Sciences et Arts : Lʼ《Immaculée-Conception》de Millet” LʼUnivers, Paris, 8 Jan 1914.モロー=ネラトンの図版クレジットでも所蔵は「教皇庁」とされており、彼が執筆した時点では本作はもう一度ヴァチカンの所有になっていたことが分かる。ヴァチカン美術館に照会を行ったが、ミレーの作品についてはいかなる資料も残されていないという回答を得た。University of Chicago, 2007, pp. 614-615, pp. 847-848.⑺Gerald M. Ackerman, “Three Drawings by Gérôme in the Yale Collection” Yale University Art GalleryBulletin, 36, Fall 1976, pp. 8-17; Gerald M. Ackerman, The life and work of Jean-Léon Gérôme,Sothebyʼs Publications, London, New York, 1986. アッカーマンはピオ・ラティーナという会社名をピオ・ラティーノPio-Latinoと表記しており、ボイムの著作にも引き継がれている。⑼Société Privilégiée Pio Latina chemin de fer de Rome à la frontière napolitaine, Notice sur le wagon― 72 ―― 72 ―⑵ミレーの手紙は以下にも採録されており、関連個所を参照。Lucien Lepoittevin (ed.), Unechronique de lʼamitié: correspondence intégrale du peintre Jean-François Millet, Tome 2, Le Vast, 2005,pp. 115-138.149.⑷この推測は、サンシエをもとにしているために起こったと思われる。サンシエは、本作の聖母が幼児イエスを腕に抱いていると記述しているが、実際には幼児は描かれていない。一方《ロレットの聖母》は裸のイエスを抱いている。サンシエの記述については、伝記を日本語訳した井出洋一郎氏も「記憶違い」と訳注を付記している。アルフレッド・サンスィエ、井出洋一郎監訳『ミレーの生涯』角川ソフィア文庫、2014年、238-244頁⑸モリロ侯爵夫人が1914年に起こした訴えの記事が以下に掲載されている。⑻車両を実見するにあたり同館学芸員のマリア=ジュゼッピナ・ブルーシャ氏にご協力をいただいた(2018年11月27日訪問)。また同氏より、車両の歴史について書かれた以下の文献をご教示いただいた。Maurizio Panconesi, Le ferrovie di Pio IX, Calosci-Cortona, 2005, pp. 303-320.

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