鹿島美術研究 年報第37号別冊(2020)
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注⑴「労働者とその家族」という制作テーマについては、日本の戦後における社会派リアリズムな― 121 ―― 121 ―ら眺めているような感覚は、女性像を一度解体し静物的にとらえた時期があったからこそ至った境地のように思われる。この想定は、今後の検討課題である。ほとんど言及されないことだが、戦後、小磯も時代の流れを一身に受け止め、そのまま抽象の世界に踏み込んでもおかしくはなかった。1950年代から60年代、絵画の激動時代において、小磯良平の辿った創造の冒険は、個人研究にとどまらず、戦後美術史においても新しい側面を啓くに違いない。どの思想的影響も可能性として提示しておきたい。⑵宮脇成之「追憶 小磯良平先生」1990年9月発行。⑶詳しくは山下晃平氏『日本国際美術展と戦後美術史 その変遷と「美術」制度を読み解く』アカデミア叢書、2017年、を参照されたい。⑷石阪春生(画家)、岡泰正(小磯記念美術館館長)による対談(2018年11月9日)より。筆者による文字おこしをそのまま引用。

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