鹿島美術研究 年報第37号別冊(2020)
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― 485 ―― 485 ―1107)/董其昌/張瑞図(1570~1641)に学ぶ革新派。第4期: 徳川家斉(1773~1841)の文化文政頃から徳川慶喜(1837~1913)の大政奉還に到るまで輸入されている碑版法帖がさらに増え、鑑識が進む。以下の3種に大別される。①革新派・明清の書に傾倒して唐様の革新派系を進めた市河米庵(1779~1858)。②伝統派・日本の平安時代初期に伝わった唐時代の書に着目した貫名菘翁(1778~1863)。・碑版法帖から晋唐の書を学んだ巻菱湖(1777~1843)。③逸脱派・ 寂厳(1702~1771)/慈雲(1718~1805)/良寛(1758~1831)/池大雅(1723~1776)など、上記①・②とは異なる書風を行った文人/僧侶。これらの分類は、それぞれの書家を経歴等に基づいて分類したものである。したがって、分類の基準は「人物」であり書風の分析に基づくものではない。中田氏の分類は、どの時期に、どのような事態が生じ、どのような書家が活躍していたのかを把握するには適しているが、造形的な分類や展開を考察した結果としては不十分である。ただ、第2期に多くの書家や流派が登場することから、この時期に江戸の唐様が大きく展開した可能性は十分に想定される。また、「唐様ブームの起点」は、雪山から広沢の時期にあるという指摘もある(注5)。これらのことを踏まえれば、雪山と広沢の書を分析することによって、江戸の唐様における展開の一端を探ることができると考えられる。第2章 雪山の書における造形的特質本章では、まず雪山の経歴について確認する。次に作品分析を行い、その造形的特質を考察してみよう。第1節 雪山について雪山の経歴については、米田彌太郎氏が史料を用いて整理されている(注6)。米

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